日本の金融所得税、実は庶民にとっては世界屈指の重税古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/3 ページ)

» 2021年10月15日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

 岸田文雄総理は10月10日、テレビ番組の出演に際し、金融所得課税を当面の間は引き上げない方針を述べた。

 総裁選以降は、債務上限問題を抱える米国や、恒大集団のデフォルト懸念がある中国の株価指数以上に日経平均株価が値を下げたことから「岸田ショック」と呼ばれる事態となった。

 「貯蓄から投資へ」のスローガンを掲げ、預金を証券に移転する政策を推し進めた末に金融所得増税となれば、実質的な預金課税といっても過言でない。そんな批判や機関投資家による“日本売り"のプレッシャーをうけて、岸田総理は方針を転換せざるを得なかったのかもしれない。しかし野党からはブレたと批判され、支持率も振るわないなど低調な滑り出しとなってしまった。

 岸田総理の「当面」という言葉尻をとらえると、じきには増税するということになる。しかし、足元でささやかれている一律25%への増税は、本当に必要なのだろうか。

 実のところ日本は、我々一般人にとっては金融所得税がとても重い国でもある。増税するにしても制度設計から抜本的に見直す必要がある。

金融所得税の国際比較

 金融所得課税をめぐっては、しばしば米国や欧州の最高税率と比較して低い方であるとする見解もある。しかし、他国は所得に応じて低い税負担とすることもできることから、一律課税の日本は、特に金融所得の小さいものにとって世界でも屈指の金融所得税が重い国となっているのだ。

金融所得課税の各国比較

 まず、日本についてみると、所得税+復興税の15.315%に住民税5%を足した20.315%が金融所得(キャピタルゲイン)に課税される。

 一方で、米国の最高税率は、37%+州・地方政府税だ。州・地方政府税は地域によって異なり、概ね1桁パーセント台となる。しかし、この37%という数字は保有期間が12カ月以下の短期トレードに向けて設定された税額であり、一般的な適用は0%、15%、20%の3段階である点に留意したい。

 米国では、給与所得などと金融所得をひとつのグループ(ブラケット)にまとめ、後者の金融所得が一定の金額を超えるたびに上の段階の金融所得税率が決まる段階課税制度を採っている。

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