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NEC森田社長に聞く「新卒年収1000万円施策」の効果 魅力的な職場を作ることこそマネジャーの仕事NEC森田社長を直撃【後編】(1/2 ページ)

» 2021年12月13日 05時00分 公開
[中西享, 今野大一ITmedia]

 デジタル化のリーダーを目指してDXを推進するNEC。同社は顔認証に代表されるように世界でも有数の認証技術を持っている。加えて月や火星探査などの宇宙開発など夢のある技術開発に長年注力してきた。先端技術を駆使して他社がまねできない新しい市場にチャレンジしている。今後の展望を森田隆之社長に聞いた。

森田隆之(もりた・たかゆき)1960年生まれ。83年NEC入社。2002年に事業開発部長。08年に執行役員。16年に取締役。18年に副社長、21年4月から社長兼CEO。大阪府出身(撮影:山崎裕一)

魅力的な職場を作るのがマネジャーの仕事

――NECは米国標準技術研究所(NIST)が実施したベンチマークテストで、顔認証と虹彩認証の精度評価で1位を獲得し「2冠」に輝きました。虹彩認証はまだ世間ではなじみが薄いのですが、将来性をどう考えていますか。

 虹彩は目の指紋のようなもので、精度が高く今後は広がると思います。これまでの虹彩認証の課題は、認証するのに数十センチの距離に近づき立ち止まる必要がありました。現在は、数メートル離れた場所で歩きながらでも認証できるようになり、認識率も今後はもっと高まります。

 いくつか実証実験をしている企業があるものの、まだ価格が高く、普及するにはもう少し時間がかかると思います。インドの国民IDは実際に顔、虹彩、指紋を組み合わせて使用しています。複数の生体認証を組み合わせるほど精度を上げることができ、顔と虹彩を使えば地球上の人類全員を高精度に認証できます。

顔認証技術を使った新たな搭乗手続き「Face Express」のイメージ
「Face Express」のイメージ

――7月から成田空港と羽田空港でNECの顔認証技術を使った新たな搭乗手続き「Face Express」がスタートしました。顔認証はスターアライアンス加盟の航空会社にも導入されていますが、手応えを感じていますか。

 東京2020オリンピック・パラリンピックでも使われ、「本当に使えるね」という声を現地でいただきました。ゲートで人を「入場不可」とはじく際に、機械だとトラブルがなくスムーズにできます。人によるオペレーションよりも機械の方が、その場の警備の方も心安らかに対応できるという声もありました。

 単に技術だけでなく使い方、仕掛けにおいて応用例が広がってきそうです。マーケットが広がると参入企業も増え、それだけ競合にもなります。NISTで1位と評価されたので、需要があった場合には、少なくともお客さまからは声がかかる状況にあります。

東京2020での顔認証システム利用の様子

――JAXAの「はやぶさ2」の開発ではイオンエンジンなどで多大な貢献をしました。今後のJAXAのプロジェクトにはどう関わっていきますか。

 (JAXAだけではないが)低軌道や通信領域への展開、宇宙デブリ、安全保障など多様な領域で宇宙活用が広がっています。地上の情報系を含めた宇宙技術を持っているのは、日本に1〜2社しかありません。利益的にはもう少し出してほしいものの、長期的な視点を持ちながら発破をかけています。宇宙事業に携わっているメンバーの意識は非常に高く、NEC全体の元気にもつながります。

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