二転三転の電子帳簿保存法、紙で保存可能な「やむを得ない事情」とは?(1/2 ページ)

» 2021年12月16日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 電子受領データの電子保存を義務化する、電子帳簿保存法の改正が2022年1月に迫っている。施行まで一カ月を切っているが、義務化の程度について国税庁の見解は二転三転し、12月10日に発表された「令和4年度税制改正大綱」には、23年12月31日まで電子保存義務を猶予する内容が盛り込まれた(記事参照)。

二転三転した電子保存義務

 今回の電帳法改正の内容について、流れを簡単に振り返ってみよう。20年12月に令和3年度税制改正大綱が決定され、ここで電子化の妨げになっていたスキャナ保存の要件が大幅に緩和されたほか、電子取引データの電子保存義務が盛り込まれた。

 続いて7月に国税庁は電子帳簿保存法一問一答で、電子保存が「要件に従って保存されていない場合は、青色申告の承認の取消対象となり得る」ことについて言及した。帳簿の電子化を検討していない企業であっても、相手から電子データの形で領収書などを受け取ると、保存方法によっては青色申告の取消リスクがあるということだ。

電子帳簿保存法での対応は二転三転した(BEARTAILが公開した電子帳簿保存法改正についてのホワイトペーパーより)

 この頃から、今回の電帳法改正は他人事ではないという意識が高まり始めた。法改正自体の認知度は相変わらず低かったものの、経理担当者を中心に、どう対応するかの動きが活発になってきた。

 一方で、全面的に電子化を予定していない企業の中には、紙と電子の二重管理を嫌い、相手に「書類はできるだけ紙で送ってほしい」と伝える企業も出始めた。電子化への逆行だ。

 こうした背景の元、11月に国税庁は、「取引の記帳や申告への反映が適切に行われている状況において、電子で保存すべき取引情報が書面からも確認できる場合には、「直ちに青色申告の承認が取り消されることはない」と公表。厳格な罰則は見送るとした(記事参照)。

 それでも電子保存を巡る混乱は収まらず、12月10日には、23年12月31日まで電子保存義務を2年間猶予する経過措置が発表されたわけだ。一部の事前報道とは異なり、税務署長への事前申請は不要になった。

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