クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

自動車メーカー8社のカーボンニュートラル戦略池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/8 ページ)

» 2022年01月01日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 新年明けましておめでとうございます。旧年中のご愛読に心から感謝を申し上げます。

 本年もみなさまにお楽しみいただける記事を、着実に書いていく所存です。なにとぞよろしくお願いいたします。

 ということであらたまったご挨拶も早々に、新年1発目のコラムは、2021年の振り返りだろう。「2021年乗って良かったクルマ」でも触れた通り、まあとにかくトヨタの存在感が強い1年だったと思う。

 すでに2年に及ぶ新型コロナ禍の中で、着実に利益を上げ、着々と主力級の新型車を発表し、部品不足の中で被害を最低限に抑えるダメージコントロールをやり遂げてみせたあたり、もうちょっと別格過ぎる。

 それ以外の話題といえば、やはりカーボンニュートラル戦争の勃発が大きい。ということで各社のカーボンニュートラル戦略はどうなっているのかについて、俯瞰(ふかん)的に見てみたいと思う。

マルチソリューションのトヨタ

 トヨタのカーボンニュートラル戦略は、これまで幾度となく書いてきた通りマルチソリューションである。その内、最も基本となるのは高効率の内燃機関だ。それに加えて、ダイハツが開発したライズ用のシリーズハイブリッド、プリウス以来のお家芸ともいえるシリーズ/パラレルハイブリッド、シリーズ/パラレルのバッテリー容量を引き上げて充電機能をプラスしたRAV4 PHVなどのプラグインハイブリッドがすでにある。

 そしていよいよデビューがカウントダウンに入ったbZ4Xからスタートする30車種のバッテリー電気自動車(BEV)だ。さらにMIRAIとSORAの燃料電池車(FCEV)もある。国内では販売されていないものの、再生可能燃料であるバイオエタノールを使ったシリーズ/パラレルハイブリッドはすでにブラジルで実績を積んでいる。ここまでが発売済みまたは発売予定が発表されているものだ。

マルチソリューションのトヨタは、2021年12月に30車種のバッテリーEV(BEV)も発表した

 このほかに、開発中案件として発表済みの水素内燃機関があり、発表こそないものの確実に進めていると目されているe-fuelなどのカーボンニュートラル系合成燃料各種である。

 細かく分析すればキリがないが、あまり深追いすると全体像が見えなくなる。要するに、トヨタはとにかく可能性があるものは片っ端から全部やっている。いろいろ取材した結果、少なくとも乗用車用としてあまり力を入れるつもりがないのはマイルドハイブリッドとディーゼルくらいという印象だが、それらはそれらで、過去に販売していた実績があり、必要とあらばすぐキャッチアップできる位置に付けている。

 その他にトヨタが別格にスゴいと思うのは、バッテリー原材料の確保を意図して、06年から、南米でリチウム鉱山の開発に着手。すでに全世界埋蔵量の10%を確保し、2030年までに必要となるバッテリー原材料の手配が完了済みである点など、プロジェクトのスタートから見れば、40年近い未来のための手を着々と打っていることだ。水素の供給や輸送、利用の実験などもこうした長期計画の一部である。時間軸的にもジャンル幅的にもとてつもないカバー範囲に恐れ入る。

 もちろんこれだけ全部にベットしたら、全勝はあり得ない。どれかが勝てばいいという賭け方で、その体力が凄まじい。トヨタのマルチソリューションはとにかく他を寄せ付けない圧倒的なマルチ感がある。他社でいうマルチソリューションは、要するに「BEVとHEVの共存」を軸に、HEVの種類数や仕組みに多少の差がある程度で、上に挙げたような技術の数々を裏側で粛々(しゅくしゅく)と動かしている会社は他に存在しない。

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