牛のゲップを抑えて温暖化対策も GXに取り組むスゴイ会社(1/4 ページ)

» 2022年01月14日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 DXに続き、昨今のトレンドの1つがグリーントランスフォーメーション(GX)だ。テクノロジーを駆使して脱炭素など、温室効果ガスを抑制し、持続的な社会を築く取り組みを指す。

 そんなGXに長けた世界の企業をいくつか紹介しよう。教えてくれたのは、三井住友DSアセットマネジメントで全世界のGX関連企業に投資する「グローバルGX関連株式ファンド」を運営する、運用部グローバルグループヘッドの青木英之氏だ。

(写真提供:ゲッティイメージズ)

牛のゲップのメタンガスを抑制

 地球温暖化対策というと二酸化炭素排出量を抑えることを指すことが多く、脱炭素などとも呼ばれる。しかし、温室効果ガスは二酸化炭素だけではない。有名なのが、牛のゲップに含まれるメタンガスだ。

 メタンガスは二酸化炭素の25倍以上の温室効果を持っており、その2〜3割は“はんすう”する動物のゲップによるものだとされている。牛やヒツジ、ヤギは世界に30億頭あまり飼育されており、世界全体の温室効果ガスのなんと4%がゲップで生まれている。

 この牛のゲップを減らせる飼料を開発しているのが、オランダのロイヤルDSMだ。「牛が草を消化するときにメタンガスが発生する。この消化のプロセスに影響して、メタンガスが発生しないようにする」と青木氏。3〜4割のメタンガスが削減できるという。これは、石炭火力発電所126カ所に相当する量だ。

オランダのロイヤルDSMは、メタン抑制剤Bovaerを牛の飼料に混ぜることで、メタンガスを抑制し温室効果ガス排出を減らせるとしている

 このDSM、もともとは100年以上の歴史を持つ炭鉱会社だった。石油がエネルギーの中心になるタイミングで、総合石油会社に変わり、今また再びエンジニアリングプラスチックとビタミン飼料配合剤に経営の軸足を移している。時勢に合わせて、本業を大きく転換した形だ。

 同社が開発したメタン抑制剤Bovaerは、すでにEUで承認を受けており、米FDAでも承認プロセスが進んでいる。「これから販売を開始し、2030年には5億ユーロ程度の売り上げとなる見込み。ただこれは乳牛だけの数字だ。3倍以上の数がいる肉牛をターゲットにできれば市場は大きく広がる」(青木氏)

 しかし牛にこの飼料を食べさせるコストは誰が負担するのだろうか? 「温室効果ガスを出さないで育った牛です」と書いてあったら、消費者は高くても買うのだろうか。実はここに規制の妙味がある。ヨーグルトなどの乳製品を作っているメーカーは、温室効果ガスに関する影響を開示する必要に迫られているのだ。

 例えばEUは、資産運用会社に対し投資先のサステナビリティ情報開示を求める規制を進めている。これによって、投資をしてほしかったら温室効果ガスについての開示が必要で、そうなるとコストを掛けてでも排出量を減らさなくてはならないというインセンティブが働くわけだ。

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