リテール大革命

アマゾンが作る「アパレル店舗」は成功するのか?石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(1/3 ページ)

» 2022年03月07日 07時00分 公開
[石角友愛ITmedia]

連載:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線

小売業界に、デジタル・トランスフォーメーションの波が訪れている。本連載では、シリコンバレー在住の石角友愛(パロアルトインサイトCEO・AIビジネスデザイナー)が、米国のリテール業界の最前線の紹介を通し、時代の変化を先読みする。

 今回は、アマゾンが新しく開設するアパレルストアについてご紹介します。

 米国では現在、アマゾンが経営するリテールショップが5種類あります。無人店舗のAmazon Go、食料品のAmazon Fresh、4つ星以上の雑貨やおもちゃがそろうAmazon 4-Star、4つ星以上の本が並ぶAmazon Books、そしてショッピングモールに設置されるAmazon Pop Upです。

 3月2日、アマゾンはこのうちのAmazon 4-Star、Amazon Books、Amazon Pop Upの全68店舗を撤退する計画を発表しました。ロイターでは、実店舗の事業は収益が低く、アマゾンの他事業の成長の足を引っ張っていたと報じています。

 しかしそんな中、アマゾンは新しい形態のリテールショップの出店を計画しています。今年1月に発表された、アパレルストアのAmazon Styleです。

Amazon Style(出典:アマゾンのWebサイトより)

アパレル進出の背景は?

 コロナ禍でアパレル業界全体は打撃を受けていますが、一方で、ステイホームの影響でラウンジウェアやヨガウェアなどのリラックスウェアの需要が増加しています。アスレチック(運動)とレジャー(余暇)を足した、アスレジャーという新たなファッションジャンルが生まれているほどです。

 こうした分野に強い、アマゾンのアパレル売り上げが伸びています。

 2021年のWells Fargoの調査結果によると、アマゾンU.S.のアパレルおよびフットウェアの売り上げは20年に約15%伸びて410億ドル以上となり、これは競合のウォルマートと比べて約20〜25%も高い数字です。

 また、アマゾンは米国全体のアパレル消費では約12%を、米国のEC上でのアパレル消費で言えば約35%ものシェアを占めています。記事では、アマゾンは今や米国最大手のアパレルリテーラーになったと書かれています。

 ECアパレル業界でいえば3分の1以上のシェアをアマゾンが占めていますが、全体を見ると、8割以上の消費がその他の店舗などで行われていることが分かります。この未開拓の市場に進出するために、Amazon Styleがオープンするのだと考えられます。

 1店舗目は、22年中にカリフォルニア州のグランデール市で展開を予定しています。

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