コロナ禍によって、企業の採用活動は変化せざるを得なくなった。面接はオンラインへ移行し、人事担当と就活生がリアルに顔を合わせる機会は激減している。この状況は、オンラインを活用することで地方の学生を採用しやすくなるメリットがある一方で、新たな課題も生み出している。
従来は、エントリーシートや通常の面接だけでは測れない人柄などの部分を見るために、複数の学生を集めた対面でのグループディスカッションが選考プロセスに組み込まれることが多かったが、オンライン採用ではそういった場を設けられない。そのため、企業は限られた情報からその学生が自社のカルチャーにマッチする人材なのかどうかを判別しなくてはならない状況となっている。
優秀な人材をいかに獲得するかは企業にとって重要な課題だ。そして、企業競争力を強化するためには、人材の多様性を高めることも肝要になり、求人を出して応募を待つだけの従来の採用方法だけではない、新たな方法を模索する動きも生まれ始めている。
では今後、企業はどのようにして人材を確保していけばよいのだろうか? 動画を軸にした次世代の採用マッチングプラットフォーム「JOBTV for新卒」を2021年12月にオープンしたベクトル(東京都港区)のJOBTV事業部長、在原洋平氏に話を聞いた。
「新卒採用の方法は、これまでも時代とともに変化を続けてきた」と在原氏は話す。推薦や縁故採用が中心だった就職先選びを、学生が自らの意志で行う流れが生まれたのは、1960年代に就職情報誌が創刊されたことが影響している。その後、80年代には合同企業説明会による一斉就活が実施されるようになり、PCが普及した90年代には就職ナビサイトが誕生した。
2000年代に入ると、データベースに登録された就活生のデータを企業が閲覧し、企業側から声をかけるスカウト型採用も行われるようになる。SNSが普及した10年代には、企業がFacebookなどを活用して会社説明会の告知やスカウトを行ったり、学生側がスカウトをもらうためにSNSで自身をアピールしたりする「SNS就活」も行われるようになった。そしてコロナ禍となった20年以降、採用がオンラインにシフトしていき現在に至る。
採用のオンライン化と聞いてイメージするのは、会社説明会のオンライン開催やWeb会議ツールを使った面接といった光景だろう。しかし、米国ではそこから一歩進み、Z世代の感性と一致した新たな手法が広がりだしていると、在原氏はいう。
「履歴書の代わりに短い動画を撮影し、それを『TikTok』に掲載して自分をアピールする『動画履歴書』や『TikTok就活』が新常識になりつつあります。これまでの変遷を見ても、日本の就活トレンドは米国の後追いになることが多いので、動画履歴書も今後日本で本格化していくのではないでしょうか」(在原氏)
実際に日本の就活市場でも、採用に動画を活用する動きは徐々に増えつつある。ディスコが21年7月に実施した調査では、Web選考において、あらかじめ設定された質問に回答した動画を撮影する「録画面接」の経験があると回答した学生は、20年卒では13.6%だったのに対して、22年卒では37%と約2.7倍に増加している。
さらに、自己PRを録画した動画を提出する「自己PR動画」による選考の経験があると回答した学生は、20年卒が23.2%に対して、22年卒は40.3%とこちらも増加している。在原氏も、「Z世代の動画に対する意識は、上の世代とは大きく違う」と話す。
「Z世代の就活生はスマホで動画を撮ることに慣れているので、自己PR動画の撮影にもそこまで抵抗はないようです。また、情報収集にもTikTokやYouTubeのショート動画といった数十秒〜1分程度で完結する短尺の動画を積極的に活用する傾向があります」
では、動画は採用にどういった影響を与えるのであろうか?
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