「近畿のオマケ」和歌山行きの飛行機に、なぜ客が増えているのか「旅の満足度」が1位(1/4 ページ)

» 2022年08月24日 06時30分 公開
[濱川太一ITmedia]

 いま、和歌山県に熱い視線が注がれている。白浜町の南紀白浜空港は今年4月以降、搭乗客数が4カ月続けて月別の過去最多を更新。旅行専門誌『じゃらん』が7月に発表した宿泊旅行調査の「都道府県魅力度ランキング」では、北海道や沖縄を抑えて総合満足度1位になった。日本一のパンダ飼育頭数を誇りながら、いつも東京・上野動物園に話題をさらわれ、県民自ら「近畿のオマケ」と卑下するなど、影の薄さが目立ってきた和歌山県。一体、何が起きているのか。

パンダの飼育頭数で全国1位を誇る和歌山県(出典:写真AC)

4カ月続けて搭乗客が過去最多

 「特別に大きなことをしたわけではなく、小さな取り組みを積み重ねてきた結果が表れたのではないか」

 こう話すのは、空港を運営する南紀白浜エアポート(同県白浜町)のオペレーションユニット長、池田直隆さんだ。

 同空港は現在、東京・羽田間を約1時間10分で結ぶ1日3往復の定期便が就航している。

 県港湾空港振興課によると、今年度の月別搭乗客数は、4月1万4512人、5月1万8233人、6月1万4398人で、いずれも月別の過去最多を更新している。7月は1万9689人を記録し、これまで月間で過去最多だった19年11月の1万8871人を818人上回った。年度別の過去最多は19年度の17万7135人で、今年度はそれを上回るペースで推移しているという。

南紀白浜空港に降り立つ航空機(提供:南紀白浜エアポート)

 今年4月に新型コロナウイルスの感染が沈静化し、行動制限が解除されたとはいえ、全国の地方空港が搭乗客数の伸び悩みに苦しむ中、月別の過去最多を更新しているのは異例だ。

 池田さんは「ワーケーションの受け入れや、空港DX事業など、ビジネス面の取り組みが搭乗客数を底上げしている」と指摘する。

全国ワースト1位の「人口流出」ワーケーションでカバー

 ワーケーションは、リゾート地などでリフレッシュしながらテレワークをする新しい働き方として、コロナ禍で広く知られるようになった。

 しかし、和歌山県はコロナ禍前の17年度から、全国に先駆けて「和歌山ワーケーションプロジェクト」と称して、普及に力を入れてきた。

和歌山県はコロナ禍前の2017年度からワーケーションを推進してきた(提供:和歌山県)

 背景にあったのが、止まらない人口流出だ。県では1996年以降、人口が一貫して減少を続けており、2015年の国勢調査では近畿で唯一、100万人を割った(22年4月1日現在で90万6968人)。文部科学省の統計によれば、高校生らが県外の大学などに進学する割合は1978年以来、41年連続で全国1位を記録。近年は新たな大学や学部の開設が相次ぎ、2019年に42年ぶりに1位を脱し、島根県に次ぐ2位となった。

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