マツダがロータリーにこだわり続ける理由 その歴史をひもとく:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)
先日、マツダの三次テストコースが開業50周年を迎え、マツダファンたちによる感謝祭が現地で行われた。彼らを魅了するマツダ車の最大の特徴と言えば「ロータリーエンジン」だが、そこに秘められたエピソードは深い。
自動車メーカーはどこも自社のテストコースを持っている。たいていは複数のコースを持っているので、各社の現在の代表的なコースを列記してみよう。トヨタは東富士、日産、ホンダ、スバルは栃木、三菱は岡崎、スズキは静岡の相良、ダイハツは滋賀の竜王、このほかに寒冷地のテスト用コースを北海道に持っているのが一般的だ。
さて、マツダのテストコースといえば広島の三次だ、自動車好きにとって、トヨタの東富士や日産の追浜、ホンダの鷹栖と並んで、ある意味でメーカーのアイデンティティの1つになっている。
その三次テストコースが開業50周年を迎え、マツダファンが主催するファンミーティングが開催された。全国から2日間で3000人のマツダファンと、1200台の歴代マツダ車が集まり、さまざまな催しが行われた。「R360」から始まる懐かしい歴代モデルの展示や技術展示、トークショーに加え、ロータリーエンジンの部品を模した三角形の高速周回路でマツダ車オーナーによるパレードランも行われた。
メインイベントは1991年にル・マンでドラマチックな総合優勝を遂げた「マツダ787B」のデモランだ。しかも車両は優勝車両そのものの55号車である。ハンドルを握るのは優勝チームのジョニー・ハーバートでもベルトラン・ガショーでもフォルカー・ヴァイドラーでもないが、マツダのル・マン・チャレンジに多大な貢献を果たした「ミスター・ル・マン」こと寺田陽次郎氏だ。多くのファンが見守る中、三次テストコースのストレートを個性的な甲高いサウンドを響かせて300km/hオーバーで疾走する姿は圧巻だった。
と、イベントの紹介そのものは簡単に済ませてしまう。やはり本連載で気になるのは企業の戦略や来し方だからだ。マツダにとって三次のテストコースとは何なのか、当時の企業経営はどんな状況だったのかにスポットを当ててみたい。
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