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「日本の企業はおかしい。欧米の企業から見たら……」ベネッセ・原田氏の働き方(5/5 ページ)

ワークライフバランスの課題に関する議論は、さまざまな立場で行われている。しかし、日本人のワークライフバランスは改善されているのだろうか。ベネッセホールディングスの原田泳幸会長兼社長に、社員の働き方について聞いたところ……。

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就任から1年、原田氏が感じたベネッセの“課題”

 原田氏が2014年6月にベネッセホールディングスのトップに就任してから1年余りが経った。就任直後の7月には、同社傘下の情報処理子会社に勤めていた業務委託先社員のシステムエンジニアの男がベネッセの保有していた個人情報を大量に外部に漏えいさせるという個人情報流出事件が発覚。大きな危機に直面した原田氏は、ベネッセの社員の働き方をどのように感じ、どのような課題を感じているのだろうか。

 「(アップル、マクドナルドという外資系企業を経て)初めて日本企業の社長になって1年、ベネッセ社員の素晴らしさも企業のコアバリューもよく理解できた。そのコアバリューを進化させていくことが経営の基本だ」と語った上で、「ただ、ベネッセの組織には課題がある」と指摘した。「ベネッセは縦割りの傾向が強かった。他の部署のことをあまり知ろうとせず、自部署の業務は自前で完結しようとする、部署間の調整をするには時間と手間を取られる、良くないパターンだったと言える」

 また、縦割り型の組織は社員の序列を重視する風土を生み出し、これが新たな価値を生み出すための創造力を阻害する要因にもなる。しかし、これらの課題について、この1年ずいぶん改善を図ってきたという。

 その上で、原田氏はこれからベネッセが成長していくために必要なものとして、(1)社内でクロスファンクショナルな動きができること、(2)社内外でコラボレーションが生み出せること、(3)肩書や役職に囚(とら)われない真のリーダーシップが発揮できること、(4)ものごとを深く掘り下げて考えることができること、(5)社員同士が違う意見を持ちながら建設的な議論を重ねて互いに学び成長すること、という5つのポイントを挙げた。

 「グローバル企業は、この5つのポイントで強さを持っている。私が就任してからこの1年で、ずいぶん変えてきた。しかし、私が旗振り役として変えるのではなく、社員がこの5つのポイントを理解して自ら変わっていこうとしなければならない」

 こうしたベネッセが抱える課題は、多くの日本型企業組織が持つ共通の弱点ともいえる。ワークライフバランスの改善も、仕事のスピードや質の向上も、新たな価値の創出も、旧態依然としている日本型企業の弱点を見直し、社員ひとりひとりの意識を変え、企業風土を変革させることから始まるのだ。「トップダウンで強引に組織のあり方を180度変えてしまったら、今のベネッセのいいところが消えてしまう。慎重に時間をかけて社員ひとりひとりの仕事に対する意識を変えていかなければならない」

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