本を読む人は何を手にするのか 日本に“階級社会”がやってくる:水曜インタビュー劇場(藤原和博さん)(3/5 ページ)
「これからの日本は『本を読む習慣がある人』と『そうでない人』の“階層社会”がやってくる」という人がいる。リクルートでフェローとして活躍され、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんだ。その言葉の真意はどこにあるのか。話を聞いた。
どのようなアウトプットをするのかが大切
藤原: 本を読める時間ってどのくらいあると思いますか?
土肥: ビジネスパーソンであれば、平日は通勤時間のときに、週末は時間ができたときに……という人が多いのでは。
藤原: 1日24時間のうち、眠っている時間を8時間とすれば、起きている時間は16時間。それをもとに1年間の生活時間を計算すると、16時間×365日で5840時間……約6000時間になります。残りの人生が50年あるとして、1年の生活時間の6000時間をかけると、その人の残り時間は30万時間になります。
土肥: ふむふむ。
藤原: その30万時間の間に、どのようなインプットをして、どのようなアウトプットをするのかが大切になってくる。換言してしまえば、それが「人生」ってものですよね。
では、どうやってインプットすればいいのか。「個人的な体験」か「組織的な体験」の軸があって、もうひとつは「メディアを通じた体験」か「リアルな体験」の軸がある。この4つの体験によって、人はさまざまなことをインプットしているんですよね。少しややこしい話をしましたが、組織的なメディア体験というのは、テレビ、新聞、広告など。個人的なメディア体験は、本、インターネットなど。組織的でリアルな体験というのは、学校、会社、家族での社会的な体験。個人的でリアルな体験は、仕事、遊びなどナマに経験するすべてのことですね。ほとんどの人がこの4つのカテゴリーの体験をしているのですが、問題はこの4つの中からどこにどの程度の時間をかけているかということなんですよ。
土肥: なるほど。
藤原: 4つの中で、最も印象に残る体験はなにか。「個人的なリアルな体験」でしょう。仕事や人との出会いなどによってナマで得られる経験による記憶はものすごく大きい。じゃあ、組織的でリアルな体験はどうなのか。学校、会社、家族からのインプットはどうしても受動的になるでしょう。先生や親や上司からの命令には反発を感じたりもする。
一方、組織的なメディア体験として、新聞やテレビといったマスメディアからの影響がありますが、これに触れすぎると弊害もあります。例えばテレビのコメンテーターの意見をまるで自分の意見かのように勘違いしてしまうことがありますよね。情報を無条件に受け入れ、それがあたかも唯一の正解のように思い込んでしまう。これはとても危険なことなので、私たちは“上手に疑う”ことが必要になります。マスメディアを通じて広告に踊らされたり、コマーシャルの連呼で知らず知らずにあるイメージを刷り込まれたりもします。では情報に踊らされないためにはどうすればいいのか。個人的なリアルな体験を増やせればいいのですが、人生には限りがあります。
土肥: えと……確か、生活時間は30万時間。
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