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コンビニ本部の「天気予報データいじくり説」は本当かコンビニ探偵! 調査報告書(1/4 ページ)

夏が近づくと、コンビニのオーナーや店長は毎年のように頭を悩ます。というのは、季節商品である「冷やし麺」の発注は通常の弁当やおにぎりを発注するのとは少々勝手が違うからだ。今回は、冷やし麺発注の舞台裏を紹介しよう。

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コンビニ探偵! 調査報告書:

 「タフじゃなければコンビニ経営はできない。優しくなければコンビニを経営する資格がない」……だけど、タフであり続けることも、優しくあり続けることも、簡単ではない。

 ほとんどの人が一度は利用したことがある「コンビニ」。ニュースやデータからコンビニで何が起きているのかを、推理して、調査して報告します。筆者は大手コンビニの元本部社員、元コンビニオーナー。コンビニの表と裏を見てきた者だけにしか書けないコラムはいかがですか?


 夏が近づき「冷やし中華 始めました」という貼り紙を目にするようになると、「ああ、今年もその季節が来たか」と、コンビニのオーナーや店長は毎年のように頭を悩ます。そう、冷やし中華やざるそばなどの「冷やし麺」の発注だ。これらの発注は、本部から配信される天気予報のデータを参考にするため、通常の弁当やおにぎりを発注するのとは少々勝手が違う。

 今回は、季節商品である冷やし麺の発注の舞台裏を紹介しよう。

冷やし麺の発注はほとんどギャンブル

 夏は、天気や気温によって販売が大きく左右される商品が多い。ドリンクなど消費期限が長くて陳列棚も確保されている商品は、常に満タンにしておけば売り逃しのリスク(チャンスロス)は軽減される。しかし、冷やし中華やざるそばなどの冷やし麺類は消費期限が短いので、これらの発注はほとんどギャンブルに近い。

 ギャンブルというと語弊があるかもしれないが、多くの店長はコンビニ本部から毎日配信される天気予報のデータを元に発注数量を予想して決める。晴れて気温が30度になろうかという日は、冷やし麺の注文総数は50個、雨が降って肌寒く感じる15度前後の日は10個程度の販売と、天気や気温によって販売数が20〜30個と増減する。

 しかも、冷やし麺は気温によって売れるカテゴリーが変わる。気温25度までは、そば・うどん系の冷やし麺(ざるうどん・ざるそば)、25度を超えると冷やし中華系という具合だ。35度を超える猛暑日には、冷たいつゆが入ったそばやうどんがよく売れる。暑くなると酸味が欲しくなるが冷やし中華のタレではのどが渇くので、あっさりとした和風だしが欲しくなる人が多いのだろう。

 ここまで聞いて「天気と気温の関係に注意して注文すればいいのね」と思われただろうが、そう単純な話ではない。一般的に、人の体感温度は風速1メートル上がるごとに1度下がると言われている。風ひとつとっても、販売状況は変化するのだ。

 また、雨の降り方によっても売れ行きが影響する。夏に多いゲリラ豪雨は、降る時間によってそれ以降の時間帯の気温が下がり涼しくなることがある。

 また、クルマで来店するお客さんもいる。クルマのエアコンをつけるかつけないかで体感温度も変わる。例えば、5月の上旬あたりなら、エアコンをつける人は少ないはず。ということは、ちょっとした気温の上昇で車内は夏のような温度になる。逆に、真夏は温度を低めにしてエアコンをつけっぱなしにしているので、車内はひんやりとしている。

 お客さんの環境はさまざまなので、天気予報の予想気温は発注の参考にならない場合もある。最終的には、店の経験則が発注に大きく影響するのだが、それを許さない“勢力”がある。

 賢明な読者ならもうお気付きだろう。そう、コンビニ本部だ。この連載でも何度となく書いてきたが、彼らにとっては「発注数 > 販売数」こそが正義なのだ。次のページで、商品の発注方法について解説しよう。


ツルッとしなやか!夏の冷し中華(出典:セブン-イレブン)
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