生き残りをかけて迷走する大学の“国際教育”のいま:意外と知らない教育現場のいま(1/3 ページ)
少子化による18歳人口の減少期突入を目前とし、各大学は生き残りに必死だ。そこで「国際化」はどこも標榜するフレーズで、英語教育への傾注もまたしかり――今回は山梨学院大学のiCLA学部を例に、大学の国際教育についてお伝えする。
意外と知らない教育現場のいま:
「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」(『去来抄』より引用)
この松尾芭蕉の言葉こそ、教育の真相を突いている。古い理(ことわり)にばかり縛られていると、社会も事業体も衰退してしまう。しかし、変えてはならない部分を変えてしまうと、今度は立ち所に瓦解を迎えてしまう。教育現場は経験の蓄積を大事にしつつも、つねに果敢な脱皮を繰り広げている。その実態を極力現場の声を拾いながら、伝えていきたい。
定員割れの大学が4割を超え、いわゆるFランク大学(以下、Fラン大)の存続の危機もささやかれている。数年前、いくつかの学科で学生の8割を中国から受け容れることで、定員割れを免れていた――という岡山の吉備国際大学にまつわる報道に接した際は驚いた。
そうなったのも、要は大学が増えすぎたのがいけない。旧文部省時代には大学の新増設を抑制する方針を取っていたが、政府が地方分権の推進とともに規制緩和の方針を打ち出したことを受け、1991年に大学設置基準を大幅に大綱化。90年度には372校だった大学が現在では604校まで増えた。4年制大学への進学率は、91年度の25.5%が09年には50.2%と初めて5割を超えた。が、それ以降は横ばいだ。
そもそも、駆け込みで大学となった学校の大半が元は短大や専門学校。地方再生を安易に大学教育に賭けた行政と、このままでは干上がるという危機感を抱えていた学校法人経営者の思惑が合致した結果、大学が増え、Fラン大が生まれていったわけだ。
そして、少子化の影響で18歳人口も徐々に減り、92年の205万人が08年の段階で124万人となり、減少傾向は続いている。つまり、Fラン大は欠員補充に留学生を必要以上に受容することになったのだ。
ところが、学費も通常の日本人学生より減免され、足りない分は国からの補助金でも賄っている。10年度には補助金の8割が必要な審査を経ずに交付されていた――と12年6月に会計検査院の指摘も受けた。こうした一連の事態を「留学ドーピング」と批判する声も挙がっている。
文部科学省は09年7月29日に関係省庁も交え、「留学生30万人計画」の骨子を策定、同日の閣議後閣僚懇談会において発表もしているが、それが具体的にどう進行しているのかが、少なくともサイト上では全く見えない。
ただ、日本に在籍する外国人留学生の数は着実に増えているのは、そこからも分かり、15年度は前年度より2万4224人増の20万8379人だった。3年連続の増加となり、その内訳は大学・大学院・短大・専門学校など高等教育機関の在籍者が15万2062人、日本語学校など日本語教育機関の在籍者が5万6317人となっている。
15年3月13日付の日本経済新聞電子版に、「崖っぷち大学サバイバル 迫る『2018年問題』」(2018年から大学進学者数が減少に転じる問題)という記事が載った。「全国区の知名度を得るには、手段を選ばないという気持ちでやってきた」という、79年から山梨学院大学の経営トップを務めている古屋忠彦学長の切実なコメントが冒頭を飾り、私は私学全体が直面する問題として受け止めた。
山梨学院大は77年創部の陸上競技部が初めてアフリカ人留学生に門戸を開き、90年代には箱根駅伝で3回優勝し、全国的な知名度を得た。実際、駅伝効果は抜群で、90年代前半は1万人近い受験生を集めていたという。が、14年度の一般入試志願者は700人台で、合格倍率は1.56倍まで落ちた。着実に中堅大学の位置にこぎ着けていたのが、少子化に付随する大学の二極化で、ボトム側に滑り落ちつつあるということだ。
そこで起死回生の策として古屋学長ら理事会が打ち出したのが、15年度から発足の国際リベラルアーツ学部(iCLA)だ。
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