なぜ日本人は“世代論”が大好きなのか:常見陽平の「若き老害」論(1/3 ページ)
常見陽平が職場にはびこる「若き老害」という現象を全6回で読み解くシリーズ。第2回は日本人が大好きな「世代論」「世代闘争」が若き老害を生み出している……という話。
この連載について:
老害とはなんだろうか。辞書には、「企業や政党などで、中心人物が高齢化しても実権を握りつづけ、若返りが行われていない状態」とある。
では、老害とは具体的に、何歳くらいの人のことを言うのだろうか?職場の年齢構成、世代間の差、人材マネジメント方針、価値観などの変化から、「老害の若年化」ともいえる奇妙な状態が起きている。トライブ間の格差が顕在化しているのである。
そこには、バブル対ロスジェネ対ゆとりというような単純なものではない、抗争がある。これは単なる世代闘争ではない。若き老害族とそれ以外との闘いなのだ。
「団塊の世代」「バブル世代」「ロスジェネ世代」「ゆとり教育世代」「さとり世代」さらには、「清原・桑田世代」「松坂世代」「ガンダム世代」「エヴァ世代」「ポケモン世代」――。
私たちはいつまで世代語りをするのだろう? ◯◯世代と呼びたがるのだろう? 日本人は相当、世代論が好きだ。先日も『日経ビジネス』が50代を「ゆでがえる世代」と評した特集が話題になった。
前回は「若き老害」という現象について説明した。一般的には、高齢の人に対して使う言葉だが、近年は経営陣や管理職の若返り、若手の抜てきなどにより、裁量権をある程度持った若手社員も老害化しているという話である。実は、職場の中の人を世代でくくって語り、ときに対立姿勢を見せたりするこの世代論(世代闘争)こそ、「若き老害」がはびこる原因の一つなのだ。
最初に、世代論に関する私の考えを述べよう。この連載自体、世代論っぽいと感じるだろうが、実は私は世代論が苦手なのだ。いや、好き嫌いはいいとする。この手のものは科学的なものにはなりにくい。茶飲み話、酒の肴(さかな)には悪くないが、大抵は不毛である。
小生、42歳大学教員。1974年生まれだ。「ロスジェネ」「就職氷河期世代」「団塊ジュニア世代」とくくられ、「かわいそうな世代」だとレッテル貼りをされる。確かに、その時代の出来事、経済環境、大流行したものなどの共通点もあり、世代の特徴のようなものはなくはない。共通体験だって、ある。同世代と会うと、『機動戦士ガンダム』や、バンドブーム、ファミコンやラジコンなどの話で盛り上がったりもする。ただ、18歳人口ベースで同級生は約205万人いたわけで、それを一色単に論じること自体が無理筋である。
私は、毎年、日本生産性本部が発表する「今年の新入社員は○○型」というレポートが苦手だ。拙著『普通に働け』(イースト・プレス)と『「できる人」という幻想』(NHK出版)でかなりのページ数を割いて批判したこともある。
大卒者だけでも毎年約40万人が社会人になる。ひとくくりに評価するのはいかがなものか。2016年は「ドローン型」(強い風にあおられても、自律飛行を保ち、目標地点に着地できると言う意味で)だったが、私に言わせると毎年「新人型」だ。「意外に優秀」「でも弱い部分もある」「取扱注意」という話が、その頃流行ったモノに例えられているだけだ。その年の就活環境や、日本経済の状況などを盛り込んでいるので説得力があるかのように見えてしまうのだ。
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