それでも「カップヌードル謎肉祭」販売休止を「品薄商法」だと疑ってしまう理由:スピン経済の歩き方(1/5 ページ)
日清食品の「カップヌードル謎肉祭」が販売休止に追い込まれた。ネット上では、多くの人が「品薄商法では?」と疑いをかけているが、その一方で否定する声もある。今回の騒動を「見通しが甘かったのね」と素直に受け取っていいのだろうか。筆者の窪田氏は……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
発売前からSNSで話題を集めていた「カップヌードルビッグ "謎肉祭" 肉盛りペッパーしょうゆ」に「品薄商法」の疑いがかけられている(関連記事)。
ダイスミンチが通常の10倍入った「謎肉祭」は9月12日に発売したが、直後の15日に販売休止が発表された。日清食品(以下、日清)の説明によると、見積もっていた1カ月分の在庫がわずか3日で底をついたという。ところが、SNSに『近所のコンビニで山積みなんだけどなぁ』と実際に店内に「謎肉祭」が山積みの写真を投稿する方などがちょこちょこ現われ、「品薄商法では」という指摘をする人も出てきたのだ。
ただ、世の大多数は、こういう見方に否定的だ。
小売店というのは、売れ行きを随時チェックして、「これは在庫がなくなりそうだ」ということになれば追加注文をする。一方、メーカー側の「販売休止」はあくまで「注文を受けても出荷できません」という流通へのアナウンス的な意味合いが強い。つまり、メーカーの在庫が底をついても、店頭には山積みという状況はまったくおかしくないからだ。
これに加えて、「品薄商法」疑惑が否定される最大の理由は、メーカーにメリットがないということが大きい。
瞬間風速的に話題をつくることができても、そこで小売に「売れる品を提供できない」という大きな機会損失を与えてしまう。流通が圧倒的に強い立場にある日本の市場で、メーカーが自身の信用を地に堕とすようなリスキーな戦略をとるわけがないというわけだ。
こういう常識的なものの見方をすれば、今回の疑惑もSNSが生み出した「風説」や「デマ」の類だと結論づけられる。
ただ、それを踏まえた上でもなお、「謎肉祭」の販売休止には「謎」が多い。過去、メーカー側の供給が間に合わず、「品薄商法」の疑いをかけられた商品と比較して、明らかに異なる売り方をしているからだ。
関連記事
- 「石原さとみの眉が細くなったら日本は危ない」は本当か
女優・石原さとみさんの眉がどんどん細くなっている。彼女のファンからは「そんなのどーでもいいことでしょ」といった声が飛んできそうだが、筆者の窪田さんは「日本経済にとって深刻な事態」という。なぜなら……。 - 「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界
訪日観光客の間で「着物」がブームとなっている。売り上げが低迷している着物業界にとっては千載一遇かもしれないが、浮かれていられない「不都合な真実」があるのではないだろうか。それは……。 - 「日本は世界で人気」なのに、外国人観光客数ランキングが「26位」の理由
日本政府観光局によると、2014年に日本を訪れた外国人観光客は2年連続で過去最高を更新した。テレビを見ると「日本はスゴい」などと報じているが、国別ランキングをみると、日本は「26位」。なぜ外国人たちは日本に訪れないのか。その理由は……。 - 「LEDよりも省エネで明るい」という次世代照明がなかなかブレイクしない理由
「CCFL(冷陰極管)」という照明をご存じだろうか。LED照明にも負けない省エネで低価格な製品だが、筆者の窪田氏は爆発的な普及は難しいという。なぜなら……。 - ファミレスでタダでバラまく新聞が、「軽減税率適用」を求める理由
ホテルやファミレスなどで新聞が無料で配られているのにも関わらず、読んだことがない人も多いのでは。大量の新聞紙が「刷られて、運ばれて、廃棄されて」いるわけだが、筆者の窪田氏はあることにスッキリしないという。それは……。 - なぜ日本人はウイスキーを「水割り」で飲むのか?
ドラマ『マッサン』効果でウイスキー市場が盛り上がっている。各社の売り上げが伸びている一方で、気になることも。それは「水割り」。海外の人たちは「ストレート」や「ロック」で飲んでいるのに、なぜ日本人の多くは水割りを好むのか。その理由は……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.