マツダの通信簿:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)
先月末、マツダはサステナビリティレポートとアニュアルレポートを発表した。これはマツダ自身による過去1年間の通信簿とも言えるものだ。今回はそのレポートを基にマツダの現状を分析したい。
8月31日、マツダは恒例のサステナビリティレポートとアニュアルレポートを発表した。これはマツダ自身による過去1年間の通信簿とも言えるもので、サステナビリティレポートは主に企業活動目標と実績を、アニュアルレポートは主に経営目標と実績をまとめたものだ。つまりこの2つのレポートを読めば、マツダの今をマツダ自身がどう考えているかが分かる。今回はその2つのレポートを基にマツダの今を眺めてみたい。
2016年、マツダが何を志していたかと言えば、ブランド価値の向上が目標だった。そのための手段がSKYACTIVであり、SKYACTIVによってマツダらしい商品群を構築することを目指してきた。
利益を生み出しているロードスター
そのトライが結果としてどうだったかという点について、マツダでは着実な成長に結びついたと考えている。具体的な施策で見てみよう。
まずは、ロードスターの投入が成功したことが大きい。メインマーケットである北米では目標台数に届かなかったことで不安視する向きもあるが、日本と欧州では目標をクリアした。トータルではどうなのか? 筆者がマツダ内部の人から漏れ聞いた情報によれば、ロードスターは既に開発費の回収を終えたそうである。スポーツカービジネスの採算事業化という難しい課題をクリアし、利益に貢献できるところまで漕ぎ着けたということだ。これが大きい。マツダにとってロードスターはブランドアイコンであり、おいそれと生産中止にするわけにはいかない。
仮に事業の不採算を理由に生産中止にしなければならなくなったとしても、顧客、販売店、株主、サプライヤー、従業員などあらゆるステークホルダーが抵抗することは目に見えている。どうにか説得に成功したとしても、あらゆる側面でモチベーションの維持は難しいだろう。八方を丸く収める方法は、ロードスターを採算の取れるクルマにする以外にないのである。裏返せばロードスターの事業的成功はオールマツダの士気向上に大いに役立つのだ。
決算数値のレビュー
もう1点、CX-9の投入も大きい。新開発のSKYACTIV-G 2.5を搭載して臨んだこの新型車は、北米と中国という2つの巨大マーケットを攻略するための戦略モデルだ。このローンチも無事に推移している。
結果を数字で追ってみよう。グローバル販売台数は9.8%増の153万4000台を達成した。売上高も3727億円増の3兆4066億円、営業利益は239億円増の2268億円となっている。販売台数が増え、利益が上がっている。しかし、企業経営にとって本当に大事なのは営業利益率である。売り上げが変わらなくても、営業利益率が急落すれば利益は激減する。
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