遅すぎた? 「Spotify」ついに日本上陸 そのインパクトは
ついに日本上陸した音楽ストリーミングサービス「Spotify(スポティファイ)」。9月29日からエントリー制でサービスを開始し、11月から本格的にローンチする。世界大手が日本市場に与えるインパクトは?
音楽ストリーミングサービスの世界大手「Spotify(スポティファイ)」が、ついに日本に上陸した。9月29日からエントリー制でサービスを開始し、11月から正式にスタートする。国内では昨年以降、「LINE MUSIC」や「Apple Music」などの定額制サービスが相次いでスタート。世界大手の上陸でユーザー獲得競争が激化しそうだ。
Spotifyは2006年にスウェーデンで創業し、08年にサービスを開始。「音楽ファンが作る音楽ファンのためのサービス」をモットーに、音楽の定額配信、ストリーミング配信、フリーミアムモデルサービスの先駆けとしてスタートし、規模を拡大。現在は世界60か国1億人以上のユーザーを持つビッグサービスだ。15年売り上げは19億4500万ユーロ(約2200億円)で、前年同期比で80%の成長を果たしている。
同社の収益は有料プランと、無料プランで再生された広告収入の2軸。基本は無料プランで会員数を増やし、有料プランに誘導する「フリーミアム」モデルだ。有料会員は現在、世界で4000万人を超えている。
使用期限なし・広告付きのフリープラン
国内サービスは海外版と同様、有料のプレミアムプランと無料のフリープランの2つを用意。プレミアムプランは月額980円の再生に制限がないサービスで、高音質で広告なし、楽曲のダウンロードも行える。
一方、フリープランは広告つき。スマートフォン版では好きな曲をピンポイントで視聴できるわけではなく、アーティストやプレイリスト内でのシャッフル再生機能のみが使用できる。その他のデバイスでは、30日間あたり15時間までオンデマンド再生が可能だ。
同社の強みは、好みや流行、使用状況、曲のジャンルに合わせて楽曲を集めた「プレイリスト」をそろえている点だ。また、SNSにおけるシェア機能も備えている。また、ソニーと協力し、モバイルデバイスやタブレット、PCに加えPlayStation 4/PlayStation 3でも利用できる。
日本版ではカラオケ文化に合わせ、「歌詞表示」機能をつけた(一部の曲は歌詞がついていない)。
国内では既に「Apple Music」「LINE MUSIC」「AWA」「Google Play Music」などが展開済み。各社有料プランの価格帯は同じだ。Spotifyはキュレーション機能の強さと無料で聞ける期間が限られてはいない点は強みだが、「この曲が聞きたい」とピンポイント(オンデマンド)で聞けない点を不満に思うユーザーもいるかもしれない。
ようやく果たした日本上陸
「日本の音楽ファンを世界中の才能あるアーティストに結び付ける」「日本のアーティストと世界中のユーザーを結び付け、日本の音楽文化を知らせる貢献をする」「パートナー企業と一緒になって社会に貢献する」──ようやく果たした日本進出に当たり、Spotifyは「日本への貢献」や「パートナー企業」との友好関係を強調してみせる。
上陸が数年前からうわさされてきたSpotifyだが、すんなりと“黒船来襲”とはならなかった。国内レコード会社が強く警戒したことも背景にあるとされる。
その間、海外企業であるAppleがApple Musicをスタートし、国内でもLINEなどが手がけるLINE MUSICが人気になるなど、定額制配信に対する“雪解け”は進んだ。
Spotifyによると、先行してサービスインしたドイツでは、日本と同様に音楽市場が縮小傾向にあったものの、Spotifyが始まった12年3月以降、4年連続で拡大傾向に。Spotifyを含めた定額制サービスによる収入が年々拡大し、15年上半期には50.43億円、16年上半期には93.35億円に達したという。
アーティストへは曲ごとのストリーミング再生数に応じて利用料を支払う形。Spotifyがこれまで支払った総額は、16年現在50億ドル(約5000億円)を超えているという。
日本の音楽市場はまだCDの占める割合が大きく、デジタルはダウンロード・ストリーミング合わせて15%ほどにとどまる。定額配信サービスの利用者が増えれば、全体としては市場拡大のきっかけになる可能性もある。
一方で、定額サービスの普及がアーティストの収入低下を招くという指摘もあり、一部レコード会社やアーティストが曲の提供を拒否するケースもある。また、昨年は売上高は高成長を遂げたものの、アーティストへの支払いで最終的に赤字になっており、収益モデルの行く末を危ぶむ声も上がっている。最近になってFacebookによる買収観測も浮上している。
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