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スズキはなぜトヨタを選んだのか?池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/3 ページ)

先日トヨタとスズキの提携に関する緊急記者会見が開かれた。両社トップがその場に並び立った。この提携の背景にあるものとは?

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 10月12日、トヨタとスズキの提携に関する緊急記者会見が開かれた(関連記事、会見の主な一問一答も)。会場のトヨタ自動車 東京本社大会議室にはスズキの鈴木修会長とトヨタの豊田章男社長が揃って並んだ。

トヨタ東京本社大会議室にて行われた記者会見に臨むスズキの鈴木修会長(右)とトヨタの豊田章男社長(左)
トヨタ東京本社大会議室にて行われた記者会見に臨むスズキの鈴木修会長(右)とトヨタの豊田章男社長(左)

 スズキと言えば、まだインドにモータリゼーションが芽生えるかどうかさえはっきりしなかった1983年から進出し、インド政府や現地資本と合弁でマルチ・スズキ・インディア社(旧社名マルチ・ウドヨグ)を発足させた。以後インドの自動車産業の発展に貢献し、インドで自動車の自由化が始まった1990年初頭には5割を超えるシェアを持っていた。貿易自由化後、世界中のメーカーが続々とインドマーケットに参入し、競争激化の渦中にある現在でもその優位は維持されている。

インドの覇者スズキ

 MarkLinesの調べによれば、2016年9月のシェアでも、40.4%というダントツのナンバーワンを誇っている。2位のタタが12.6%、3位のヒュンダイが12.5%、4位のマヒンドラ&マヒンドラが10.8%、5位ホンダが4.4%であり、2位から5位まで足し合わせてもまだスズキのシェアに届かない。このことからもそのシェアは圧倒的と言える。

 ちなみにタタとマヒンドラ&マヒンドラは共にインドの財閥系自動車メーカーである。スズキは、2002年にマルチ・スズキ・インディアへの出資比率を引き上げ、子会社化したが、現在でも現地資本と共存する形になっている。

インド国民にモータリゼーションをもたらした「マルチ800」の後継車、「アルト800」
インド国民にモータリゼーションをもたらした「マルチ800」の後継車、「アルト800」

 インドの自動車販売は現在300万台目前のラインに達しているが、人口12億人のインド経済が今後発展すれば、中国に匹敵する新車販売台数になっても不思議はない。現在世界ナンバーワンマーケットである中国の新車販売台数はほぼ2500万台だが、モータリゼーションが始まったのは2000年前後で、せいぜいここ15年程度のことだ。つまりインドが中国並みに経済発展すれば、向こう15年で2000万台程度の増加ポテンシャルが見込めるマーケットになる。

 仮に現在の中国同等の2500万台になったときにスズキが40%のシェアを維持できたとすれば、インドのみで新車販売台数1000万台となり、トヨタ、フォルクスワーゲン、GMの現在のグローバル販売台数に並ぶという途方もないことになる。さすがに40%の維持は難しいと思うが、少なくとも、計算上はそれがあながちウソではないところがスズキの高い将来性評価になっている。

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