なぜ日本のカイロが、中国で売れているのか:水曜インタビュー劇場(暖公演)(1/7 ページ)
小林製薬グループの使い捨てカイロが中国で売れている。2003年に進出したが、当時、現地でカイロを使っている人はほとんどいなかった。にもかかわらず、どうやって市場をつくっていったのか。担当者に話を聞いたところ……。
いきなりだが、下の化学式を見ていただきたい。
「な、なんだよ、唐突に。数字とか英語が並んでいて、さっぱり分からないよ」と思われたかもしれないが、答えは「カイロの酸化反応」を示したものである。寒くなると、カイロをポケットに入れたり、背中に貼ったり、靴下に貼ったり、して暖をとる人も多いだろう。しかし、袋に入っているカイロがなぜ発熱するのか、その仕組みを知っている人は少ないのでは。
仕組みはそれほど難しくない。鉄を濡れたまま放置しておくと、サビが出てくる。これは鉄の酸化。つまり鉄が空気中の酸素と反応して酸化鉄(水酸化第二鉄)になる化学反応である。この反応が起きるときに出る熱を利用したものが、使い捨てカイロである。ちなみに、鉄がサビるときには熱を出しているが、ゆっくりと反応が進むので「熱く」感じることはない。
このように書くと、「なーんだ、カイロって簡単にできるものなんだなあ」と感じられたかもしれないが、早合点しないでいただきたい。心地よく感じる温かさを長時間保つことは、そんじょそこらの会社にできるワザではない。その技術力をひっさげて、海外展開を広げている会社がある。小林製薬である。2001年に創業当時からカイロを扱ってきた桐灰化学をグループ会社化。日本国内では桐灰化学が、海外ではマーケティング力のある小林製薬が売りまくる。2002年から本格的にチカラを入れ始めて、現在は10数カ国で展開。世界シェアは1位だという(同社調べ)。
たくさんの国でカイロを販売している中で、記者が気になった国がある。中国である。2003年に進出したわけだが、当時、中国でカイロを使っている人はほとんどいなかったのだ。そうした状況だったのにもかかわらず、その後、認知度はどんどんアップしていき、現在、上海では90%を超えているという。
なにもないところで畑を耕して、種をまいて、芽が出る。そして育つまで、両社はどんなことをしてきたのか。小林製薬で海外事業を担当している森田豊弘さんと、桐灰化学の橋間昌昭さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。
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