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オフィスで再生紙つくる装置発売 エプソンが新提案3年で売り上げ100億円狙う

セイコーエプソンは、使用済みのコピー用紙から再生紙を製造するオフィス製紙機「PaperLab(ペーパーラボ)A-8000」を12月に発売。企業や自治体でペーパーレス化が進むなか、紙の新たな価値を提案し、市場開拓を目指す。

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 セイコーエプソンは11月30日、使用済みのコピー用紙から再生紙を製造するオフィス製紙機「PaperLab(ペーパーラボ)A-8000」を12月に発売すると発表した。世界初の技術でオフィスのセキュリティ向上や環境負荷低減などを提案。企業や自治体でペーパーレス化が進むなか、紙の新たな価値を提供し、市場を切り開く。3年で100億円の販売を目指す。

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商品化したオフィス製紙機「PaperLab A-8000」

大量の水は不要

 一般的な製紙方法では、1枚につきコップ1杯という大量の水が必要となるが、PaperLabは大量の水を使わずに再生紙を製造できる。そのため、給排水工事が不要で、オフィスのバックヤードなどに設置が可能となる。

 それを可能にしたのが独自開発の技術「ドライファイバーテクノロジー」。2011年から5年かけて技術を確立した。

 まず、使用済みの紙に機械的衝撃を与えることで細長い繊維に変える。このとき、文書の情報は一瞬で抹消される。繊維化された紙に結合素材「ペーパープラス」を加えることで繊維を結合させ、それを加圧することで新たな紙にする。ペーパープラスの種類や加圧密度などを調整することによって、さまざまな色やサイズ、厚みの紙を作り出すことができる。

 使用済みの紙を投入してから1枚目の紙を出すのに要する時間は約3分。A4用紙なら1時間に約720枚を生産できるという。

photophoto 使用済みの紙を入れると(左)、再生紙が出てくる(右)

気兼ねなく紙を使える

 今後、PaperLabを活用することで得られる新たな価値の提案に力を入れる。多くのオフィスで課題となっているセキュリティ対策がその1つ。使用済みの紙を繊維に分解することで完全に情報を抹消できるため、機密文書の処理を社内で完結できる。

 また、さまざまな種類の紙を低コストで高速生産できることも強み。名刺などに使用できる厚紙や色紙など、用途に応じた紙を社内で生産できる。1枚当たりのランニングコストは、市販紙を購入するよりも低く抑えられるという。

 環境負荷低減に対応する「循環型オフィス」の提案にもつなげる。大量の水を使わずに再生紙を生産できることに加え、紙の購入量や紙の輸送に伴うCO2の削減を実現できる。環境負荷低減や効率化を目的に、紙を使わないペーパーレス化も進んでいるが、「気兼ねなく紙を使ってもらう」(エプソン販売の佐伯直幸社長)という新しい価値の創造を目指す。

photophoto 結合素材「ペーパープラス」(左)と繊維化した使用済みの紙(右)

小型化で普及目指す

 普及への課題は、小型化や騒音低減を実現し、オフィスに設置できるようにすること。商品化したPaperLab A-8000は、幅約2.8メートル、奥行き約1.4メートル、高さ約1.8メートル。15年12月に発表した開発機と比べて、幅20センチ、奥行き10センチほど小さくしたが、複合機のようにオフィスに置ける大きさではない。

 新商品発表会で佐伯社長は「『設備』だった製紙機を『装置』のレベルまで小型化したが、まだ第一歩にすぎない。紙の未来を変える取り組みに今後も期待してほしい」と語った。

 価格はオープンだが、予想市場価格は2000万円台前半(税別)。まずはすでにPaperLabの導入を計画、検討している企業や自治体に対して順次販売を開始する。それ以外の企業などに対しては、17年秋ごろから販売する計画。受注生産となるため、発注から納入まで約3カ月かかるという。

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