「列車の動力」革新の時代へ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」2017年新春特別編(1/5 ページ)
2017年3月ダイヤ改正は新幹線開業などの大きなトピックがない。しかし、今後の鉄道の将来を見据えると「蓄電池電車」の本格導入に注目だ。地方の非電化路線から気動車が消える。大都市の鉄道路線から架線が消える。そんな時代へのステップになるだろう。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
毎年3月にJRグループでは大規模なダイヤ改正が行われる。JRグループがダイヤを変更すれば、相互直通運転する私鉄もダイヤを変更する。新幹線や特急列車と接続する地方私鉄もダイヤを変更する。日本の新年度を控えた時期に鉄道網がリニューアルする。
2015年のダイヤ改正は北陸新幹線の延伸開業があった。2016年は北海道新幹線の開業があった。それらに比べると、2017年3月のダイヤ改正は特大トピックがない。そのため全国紙でもダイヤ改正の報道は控えめだった。ただし、小粒でも注目したい案件はある。
例えば、JR西日本では広島県の可部線を延伸する。可部駅からわずか1.6キロメートルの区間に2つの駅が新設される。特筆すべきは、この延伸区間が2003年に廃止された区間の一部に当たる。言わば廃止区間の復活であり、極めて異例だ。原則的に認められない踏切の復活や、かつて廃止して手順の検証なども興味深い。
ビジネスマン向けには東海道新幹線・山陽新幹線のスピードアップがトピックだろうか。東海道新幹線の定期列車の「のぞみ」「ひかり」の車両がすべて最新のN700Aタイプになる。このうち一部の列車は東京〜新大阪間で所要時間を3分短縮する。現在の最速列車の所要時間は変わらず、少し遅かった列車がスピードアップする形だ。
山陽新幹線は新型のデジタルATC(Automatic Train Control:自動列車制御装置)に切り替わり、新大阪〜博多間で「のぞみ」「ひかり」「みずほ」の所要時間が1〜3分の短縮、「こだま」は最大15分の短縮となる。東海道新幹線と山陽新幹線を直通するのぞみのうち、両方のスピードアップの恩恵を受ける列車は、東京〜博多間で最大7分の所要時間短縮になる。
東海道新幹線・山陽新幹線のスピードアップについて、最も恩恵を受ける沿線自治体は静岡県だろう。静岡県はのぞみが停まらず、最速列車はひかりだ。今回のダイヤ改正で定期のひかりはすべてN700Aタイプになり、すべての列車でスピードアップが図られる。静岡県にとってこの変化は大きい。
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