「Ring」の反省生かし……音声翻訳デバイス「ili」登場:イオンモール、東京メトロが採用
ログバーが、音声翻訳デバイス「ili」を企業向けに貸し出すサービス「ili For Guest」を発表。指輪型デバイス「Ring」の反省を生かしたという。
ベンチャー企業のログバーは1月31日、音声翻訳デバイス「ili(イリ―)」を企業向けに貸し出すサービス「ili For Guest(イリ― フォー ゲスト)」を6月に始めると発表した。交通機関や商業施設など、訪日外国人旅行者と接する機会の多い企業への導入を見込み、イオンモールや東京地下鉄(東京メトロ)が採用を決めた。一般ユーザー向けにも年内のサービス開始を計画している。
iliはスティック型で、ネットワーク接続など不要で単体で動作。旅行で使用する日常会話を内蔵辞書に収録しており、ボタンを押しながら話しかけると、0.2秒程度で内容を翻訳する。現在、日本語、英語、中国語に対応しており、今後、韓国語、タイ語、スペイン語への対応を予定している。
旅行者にiliを貸し出し、注文や要望をリアルタイムに翻訳することで円滑なコミュニケーションにつなげる狙いだ。商品名やショップ名などの固有名詞を端末内の辞書に追加したり、専用ソフトで入出力する言語を切り替えられる機能、過去の発話データの履歴から顧客の要望やニーズを把握できる機能を備え、企業によるカスタマイズも可能だ。レンタル料金は1台当たり月3980円。
同社の吉田卓郎社長は、「従来、語学が苦手な人が外国人と会話する際は、電子辞書や翻訳アプリで訳語を調べるのが主な手段だった。しかし、これらの方法ではタイムラグが生じる点や、インターネットがないと使えない点などの課題があった」と指摘する。「iliはこの課題を克服し、海外の人とより簡単にコミュニケーションを取ることをコンセプトに開発した」と自信を見せる。
海外で使用できるモバイルWi-Fiルーターのレンタルサービス「グローバルWi-Fi」を手掛けるビジョンとパートナー契約を締結。サービス開始に先駆け、日本各地の空港に計13カ所のブースを設け、海外に出発する日本人と訪日外国人にiliを貸し出すサービスを4月下旬から始める予定だ。
「Ring」の反省生かす
ログバーは14年、クラウドファンディングサイト「Kickstarter」で約88万ドルの出資金を集め、指に装着するとジェスチャーで家電製品などを操作できるウェアラブルデバイス「Ring」を開発したが、出荷前に次々と問題が発覚。出荷時期を何度も延期し、返金を求める出資者から問い合わせが殺到した経緯がある。
吉田社長は「当時は、製品にさまざまな機能を盛り込むことに注力するあまり、ユーザーの使い勝手への配慮がおろそかになっていた。Ringの反省を生かし、iliを開発する際は機能性に徹底的にこだわった。ホテルの顧客対応などで実証実験を繰り返し、実用性の低かった音量調節ボタンを排したほか、騒音下でも音声の認識精度を高めるためのノイズキャンセリングマイクなどを導入するなどの工夫をした」と話している。
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