“宣伝しない”でブーム起こす 村上春樹新刊:「騎士団長殺し」0時発売も(1/2 ページ)
2月24日、村上春樹氏の最新作「騎士団長殺し」(新潮社)が2冊同時刊行された。「1Q84」「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」に続き“宣伝しない”宣伝手法で大ヒットとなろうとしている本作。0時発売の現場の盛り上がりはどのようなものだったのか?
2月24日、村上春樹氏の最新作「騎士団長殺し」(新潮社)が2冊同時刊行された。「1Q84」(新潮社/2009-10年)、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」(文芸春秋/13年)に続いて久々の新作となる。
発売元の新潮社は「騎士団長殺し」の事前重版を決め、第1部「顕れるイデア編」は70万部、第2部「遷ろうメタファー編」は60万部の刷り部数になった。70万部という数字は、空前の大ヒットとなった「1Q84」の3冊目に並ぶ過去最多のものだ。
紀伊国屋書店やTSUTAYAなどの大型書店では、カウントダウンイベントや日付が変わると同時に販売を始める“0時発売”、早朝販売などを実施。ファンが列を作り、各メディアが取材に訪れていた。
“宣伝しない”宣伝手法
近年の春樹作品は、“宣伝をしない”宣伝手法を取っている。タイトルと発売時期だけが明かされ、内容もあらすじも一切知らされない。本作「騎士団長殺し」も、発売約1カ月前の1月21日にタイトルが告知されたのみだった。
出版物の宣伝は、新聞・テレビ・雑誌などのマスメディアに広告を出稿するのが一般的だ。しかし「1Q84」からの村上春樹作品は、「村上春樹」というブランド力を生かし、あえて情報を出さない(もしくは出せない)ことで、読者の期待を煽る手法を取っている。タイトル発表だけでメディアが取り上げ、SNSなどでも拡散していく。Amazonなどネット書店のランキングも、ほとんど1位と2位を独占していた。
こうした話題作を盛り上げるために、書店側も独自に施策を展開。先に紹介したリアルイベントはその1つだ。都内の大型書店では本を大量に入荷し、大きく積み上げて大々的に売り出す「タワー」も見られた。
「1Q84」は期待が過熱し、発売前から重版が相次いだにもかかわらず、一時は品薄状態に。それがまた話題を呼び、一大ブームとなった。「多崎つくる」も同様に大きく盛り上がり、発売7日間でミリオン(100万部)を突破した。
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