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金正男だけでない!? 殺人工作のリアル世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)

金正日総書記の長男である金正男が、女性2人に襲われて暗殺される事件があった。この事件は大きく報じられているが、実は世界を見渡せば、国家が絡んでいるとされる秘密工作は少なくない。例えば……。

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サイバー戦争の「リアル」もカバー

 まずイスラエルは、誰かが対処しなければ日に日に核兵器製造に近づくと考え、核開発に携わる科学者たちに狙いを定めた。目的は暗殺である。核兵器を製造する頭脳を消してしまえ、というわけだ。

 2010年11月、イランの首都テヘランに暮らしていた原子力専門家のマジッド・シャーリアリ教授は、いつも通りに車で大学に向かっていた。原子炉の動きを研究し、中性子輸送が専門の科学者だったシャーリアリは、40歳で2人の子どもをもつ父親でもあった。彼はまた、イラン原子力組織でも働いており、国内で進んでいた「巨大なプロジェクト」に関与していたことが後に判明している。つまり、イラン核開発の技術的なキーマンのひとりだった。

 11月のある朝、妻を助手席に乗せて大学に出勤途中だったシャーリアリは、イラン革命までムハンマド・レザー・シャーが暮らしていたという裕福な地域で、渋滞に巻き込まれた。ゆっくりと進む車の流れを抜けたところで、後方から渋滞をすり抜けてきたバイクが、シャーリアリの車と並走し、運転席のドアにマグネットの爆弾を押し付けた。バイクはそこから猛スピードで逃げたという。

 すると次の瞬間、爆弾が炸裂。シャーリアリは即死、妻はかろうじて一命をとりとめた。

 この事件の20分後、今度はイランの別の場所でも同様の手口で、イラン原子力組織で働いていたイラン人科学者の車が走行中に爆発。この事件でも車内には2人がいたが、どちらもすぐさま車から飛び出て助かった。

 イラン核開発を巡る科学者暗殺事件は、その後も続いた。2011年にはテヘランで原子力関係者とされる科学者がやはりバイクに乗った人物に銃殺されたと報じられている。また2012年1月にも、イラン中部エスファハーン州にあるナタンズ核燃料施設の副所長で、原子核科学者の大学教授が、再び同じ手口で爆殺された。バイクに乗った犯人が走行中の車の運転席ドアにマグネットの爆弾を付けたのだ。

 実は、こうした現実の暗殺工作に加えて、イスラエルは米国主導で、イランのナタンズ核燃料施設に対するサイバー攻撃も同時に進めていた。「オリンピック・ゲームス作戦」と呼ばれるこのサイバー工作では、PCや工作員なども駆使しながら、核燃料施設を破壊している。またイスラエルはそれ以前にも、シリアが北朝鮮の協力で進めていた核施設の建設について、スパイ工作で情報を集め、サイバー攻撃を駆使しながら戦闘機を送り込んで施設を木っ端微塵にしている。

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