カシオのスマートウォッチ、開発の裏で何があったのか:長年の苦労乗り越え商品化(1/4 ページ)
2016年春に、カシオ史上初のスマートウォッチ「WSD-F10」が発売された。アウトドアファンから高い支持を集める同製品を手掛けたのは、新規事業開発部 企画管理室の坂田勝室長だ。数々の失敗があったというが、どのようにして商品が生まれたのだろうか。
腕時計「G-SHOCK」シリーズなど数々のヒット商品を生み出し、国内外に多くのファンを持つカシオ計算機。2016年3月には満を持してスマートウォッチ市場に参入し、米Googleが提供するウェアラブル端末向けOS「Android Wear」を搭載した「WSD-F10」を発売。アウトドアに特化した機能が話題を呼び、今年4月にはファン待望の新作「WSD-F20」の発売も予定している。
成長を続けるカシオのスマートウォッチ事業を支えるのが、新規事業開発部 企画管理室の坂田勝室長だ。カシオ史上初めてスマートウォッチを世に送り出した坂田さんに、開発の際に試行錯誤を繰り返した過去と、新製品に込めた狙いを聞いた。
他社に先駆けて開発を開始、しかし……
坂田さんが経営層から「新商品を企画してほしい」と依頼を受けたのは、11年末。IoT(モノのインターネット)の技術が台頭し、「物をインターネットにつなぐ」という概念が少しずつ世に広まり始めたころだ。そんな時期に坂田さんはいち早く、スマートフォンと連動するスマートウォッチの可能性に着目。新商品として開発することを決め、12年5月にプロジェクトを立ち上げた。
開発を始めた坂田さんは、カシオの技術力を生かし、“小型のスマートフォン”と呼べるほど機能を充実させたスマートウォッチを作ることに決めた。当時は珍しかったマイク、タッチパネル、カラー液晶などに加え、メールを送受信できる機能を備えた試作機を7カ月かけて完成。経営層に見せたものの、「商品化は厳しい」という声が返ってきた。
「経営層からは『機能が多すぎて、強みがはっきりしない』『スマホを小さくしただけではスマホを超えられない。ユーザーがあえてスマートウォッチを選択するメリットがない』『製作のコストがかかりすぎる』などと厳しい指摘を受けました」(坂田さん)
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