2015年7月27日以前の記事
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「今年の新人は◯◯型」シーズンに思うこと新連載・常見陽平のサラリーマン研究所

世間で話題になる「今年の新人は◯◯型」なるものをうのみにしてはいけない。世間が騒ぐ新人像ではなく、自社の新人を分析すること。これこそが、今すぐ使える処世術なのだ。

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 春が来た。この季節は、サラリーマン研究家として大変楽しみな時期である。日本生産性本部の「新入社員の特徴とタイプ」、明治安田生命の「理想の上司」などが発表されるからだ。これらを面白がるのが、ささやかな楽しみである。

 これらのイベントの何がスゴいかというと、毎年ニュースになるわりに、そもそも調査やレポートとしての問題を抱えている点だ。なんせ、まだ働いたことがない学生に対する観察やアンケートで発表してしまうのがスゴい。説明文も毎年同じようなものだ。しかし、それなりの納得感があるというか、もっともらしい説明をしているのが憎いところだ。

2017年の新人は「キャラクター捕獲ゲーム型」

 日本生産性本部によると、今年の新人は「キャラクター捕獲ゲーム型」だそうだ。「『ポケモンGO』って言えよ」とみんなが言いたくなる気持ちはよく分かるが、そのあたりは大人の事情ということで理解しておこう。

photo 今年の新人は「キャラクター捕獲ゲーム型」

 説明文には「キャラクター(就職先)は数多くあり、比較的容易に捕獲(内定)できたようだ。一方で、レアキャラ(優良企業)を捕まえるのはやはり難しい。素早く(採用活動の前倒し)捕獲するためにはネット・SNSを駆使して情報収集し、スマホを片手に東奔西走しなければならない。必死になりすぎてうっかり危険地帯(ブラック企業)に入らぬように注意が必要だ。はじめは熱中して取り組むが、飽きやすい傾向も(早期離職)。モチベーションを維持するためにも新しいイベントを準備して、飽きさせぬような注意が必要(やりがい、目標の提供)」とある。まあ、毎年同じような説明だ。

 逆に言うと、継続して何かをやり続け、定番化すると“指定席”のようなものを手に入れることができるということだ。以前、「ユーキャン新語・流行語大賞」の関係者に取材したところ、むしろ初期は(流行語大賞に関する)取材が全くなく、話題にもならなかったとのことだった。PRなどに関わる人は覚えておこう。

世間が騒ぐ新人像ではなく、自社の新人を分析せよ

 ここまでは壮大なる前書きである。ビジネスパーソンがするべきことは、世間で話題になる「今年の新人は◯◯型」なるものをうのみにすることではない(面白がるのはOK)。まずは、自社の新人、及び採用活動を分析することだ。世間が騒ぐ新人像ではなく、自社の新人を分析すること。これこそが、今すぐ使える処世術なのだ。

 普段の業務のために新人を把握することも十分有益だ。マネジメントをするためには相手のことを知らなくてはならない。われわれの自己保身のために必要なのだ。

 人事部が採用活動で使っているツールにも注目したい。パンフレットや、採用ページなどである。そこでの社長の言葉や、どんな事業や従業員が紹介されているのかということからも企業の方向性を理解することはできる。社長があまりに滑っていることや妄想のようなことを言っていたら、その企業か、社長のいずれかの先が危ういかもしれない。

 いや、「先行きが危うい」という意味で言うならば、そもそも採用ができなかった企業、思うような新人が採れなかった企業は危うい。未来の従業員からそっぽを向かれているということである。

 もちろん、売り手市場であり、若者が足りない時代である。しかし、彼らにそっぽを向かれるということは企業に職場としての魅力がないということだ。また、経営陣や人事担当者の熱も足りていないのかもしれない。Webサイトなどで語られる求める人物像と、実際の新人のギャップを確認したい。

 今年の新人は「キャラクター捕獲ゲーム型」と言うが、実際は新人を捕獲できているかどうかを問われるのは企業の方だ。新人から企業と自分の未来を考えてみよう。

常見陽平のプロフィール:

 1974年生まれ。身長175センチ、体重85キロ。札幌市出身。一橋大学商学部卒。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。

リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。長時間の残業、休日出勤、接待、宴会芸、異動、出向、転勤、過労・メンヘルなど真性「社畜」経験の持ち主。「働き方」をテーマに執筆、研究に没頭中。著書に『僕たちはガンダムのジムである』『エヴァンゲリオン化する社会』(ともに日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)『普通に働け』(イースト・プレス)など。


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