日本人が「通勤地獄」から抜け出せない、歴史的な背景:スピン経済の歩き方(1/5 ページ)
暑くなってきたので「満員電車」が辛くなってきた。「働き方改革を実現しよー」「時差出勤をしよー」と叫ばれているのに、なぜ“通勤地獄”は解消されないのか。その歴史をひも解いてみると、意外な事実が……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」に迫っていきたい。
「満員電車」が辛い季節がやってきた。
ジメッとした車内。汗ダラダラのオジさんたちと密着しながら人の波に押しつぶされそうになるのを不自然な姿勢で必死に耐えるだけでもかなりの「苦行」だが、そこに加えて、ジメジメしているので誰もが殺気だっているのもかなり辛い。
いたるところで聞こえるチッという舌打ちと深いため息。足を踏まれた、背中を押されたとケンカを始める者もいれば、降車がてらメンチを切るオジさんもいる。また、最近多く報じられる「痴漢トラブル」も、世の男性たちに大きな負担を課している。女性客と密着する場合、なるべく手は見えるところへ出すなどの「触ってませんアピール」を周囲にしなくてはいけないからだ。
そんな世のサラリーマンたちを憂鬱(ゆううつ)にさせる「通勤地獄」を解消しようというプロジェクトがこの夏行なわれることをご存じだろうか。
「満員電車ゼロ」を公約に掲げる小池百合子東京都知事が、企業や個人に参加を呼びかけている「時差Biz(ビズ)」である。通勤ラッシュ回避のために通勤時間をズラしたり、テレワークを活用したりという「働き方改革」のひとつで、鉄道会社やさまざまな民間企業が連携し7月11日から25日の間に行なわれるという。
小池さんといえば、「クールビズを世の中に広めたのは私です」でおなじみだが、あの国民啓発運動を成功に導いた実績から、「時差ビズ」もいけると踏んだということなのだろう。
確かに、「時差通勤」がクールビズくらい当たり前になってくれれば、「地獄」のような通勤ラッシュも多少はマシになる。小池知事にはぜひともテレビなどに出演してガンガン啓発していただきたいと願わずにはいられない。
ただ、その一方で、「働き方改革しよう!」という呼びかけだけで、時差通勤を広めていくのにはやや心もとない気もしている。
実は言い方はいろいろあるが、「時差通勤で働き方改革を!」というのは、終戦直後から唱えられつつも、この70年間ほとんどうまくいった試しがないスローガンだからだ。
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