「若者の○○離れ」という誤解:常見陽平のサラリーマン研究所(2/2 ページ)
若者のクルマ離れ、CD離れ、ビール離れ、恋愛離れ……。私はこの「若者の○○離れ」という言い回しが嫌いである。
新しい楽しみ方が広がっている
「若者の○○離れ」という表現を手放して社会を見ると、見える世界が変わってくる。そこには、新しい楽しみ方が広がっているのだ。その最たる例の1つが、「若者の音楽離れ」である。
CDの販売枚数の減少から音楽離れが指摘されているが、実際には世界的にも音楽の楽しみ方は多様化している。例えば音楽ライブ。2015年の市場は3405億円で、07年の1450億円から倍以上に伸びている。また、YouTubeや定額配信サービスなどネットで音楽を楽しむ人も増えている。別に新譜だけではなく、旧譜を楽しむ時代にもなっている。要するに、最新CDの枚数を争う時代ではなくなっているのである。
このように、「若者の○○離れ」の裏に、最近の若者はもっと青春を謳歌した方がいいのに的な老害の説教が跋扈(ばっこ)するわけだが、見方を変えると、以前は楽しみ方の選択肢が少なかったり、背伸びして消費していただけとも言える。そう考えると、逆に若者をディスる層がかわいそうに見えてきたりもする。
というわけで、メディアも「若者の○○離れ」なんて記事はもうやめといた方がいいんじゃないかと問題提起しておく。そんなものはバカ丸出しの老害芸なのである。
常見陽平のプロフィール:
1974年生まれ。身長175センチ、体重85キロ。札幌市出身。一橋大学商学部卒。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。長時間の残業、休日出勤、接待、宴会芸、異動、出向、転勤、過労・メンヘルなど真性「社畜」経験の持ち主。「働き方」をテーマに執筆、研究に没頭中。著書に『僕たちはガンダムのジムである』『エヴァンゲリオン化する社会』(ともに日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)『普通に働け』(イースト・プレス)など。
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