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日本全国の土産物屋で、なぜ「木刀」を売っているのかスピン経済の歩き方(1/4 ページ)

修学旅行のときに、土産物屋で「木刀」を購入した人もいるだろう。家に持って帰っても、特に使い道があるわけでもないのに、なぜこのようなモノを買ってしまったのか。いや、そもそも、なぜ土産物屋で木刀が売られているのか。その謎は……。

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スピン経済の歩き方:

 日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。

 「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。

 そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」に迫っていきたい。


 少し前、「こんぴらさん」として親しまれる香川県の金刀比羅宮を観光で訪れた。

 足を運んだことのある方ならば分かると思うが、参道口から奥社までの1368段の石段は意外とキツい。そこで休憩がてら、参道沿いに軒を並べる土産物屋に立ち寄ってみたところ、なんともノスタルジックな気持ちにさせられるモノが目に飛び込んだ。

 「木刀」である。

 最近の子どものことはよく分からないが、私が小中学生だった30年くらい前、男子が修学旅行へ行って手を伸ばす土産物といえば、これが定番だった。不良も優等生も関係なく、「木刀」を手に家路につく男子が多かった。

 まだこんなの売ってるんだなあと感慨にふけりながら手にとってみると「1300円」という値札が付いていた。それを見てふと疑問がわきあがった。

 「1300円」といえば、修学旅行の小遣いのなかでかなりの割合を占める。なぜ少年時代の私はなけなしの小遣いをはたいて、こんなモノを買ってしまったのか。

 バカだったといえばそれまでだが、別にグレていたわけでもないので、周囲を威嚇しながら振り回すなどの使い道もない。事実、家に持ち帰ってからはタンスの間に落ちたモノを引き寄せるくらいにしか使っていない。

 そうなると、考えられるのはなにかしらに対する「憧れ」だ。そういえば、ちょうど小学生くらいのとき、『週刊少年ジャンプ』で連載していた『風魔の小次郎』(著・車田正美)というマンガで主人公が「風林火山」という木刀を持って、ライバルたちと戦いを繰り広げていた。

 やはり主人公が「洞爺湖」と彫られた木刀を持つ「銀魂」のファンである外国人観光客たちが、いまだに洞爺湖温泉で木刀を買い求めるという話もあるので、なくはない。

 ただ、しばらく自分の記憶をたどってみると、それだけではないような気がしてきた。確かに頭の悪い子どもではあったが、鏡の前で木刀を構えて、「風魔烈風剣!」とかやっていた思い出は皆無なのだ。


なぜ土産物屋で「木刀」を買っていたのか
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