データを持つ企業が「融資サービス」を加速させる:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
あらゆるデータを所有するIT事業者などが独自の融資サービスを展開する動きが加速している。近い将来、豊富なデータを持つ企業が、金融機関の与信判断の枠組みを超えるシステムを作り上げるかもしれない。
「融資」の世界に新しい動きが出てきている。金融機関ではない一般の企業が、さまざまなデータを駆使することで独自の融資サービスを展開している。
近い将来、豊富なデータを持つ企業が、金融機関の与信判断の枠組みを超えるシステムを作り上げるかもしれない。
リクルートは2017年8月、中小企業がネット上で融資サービスを受けることができる新サービスをスタートさせる。同社は宿泊予約サイト「じゃらんnet」を運営しているが、このサイトに登録している旅館など、中小の宿泊事業者を対象に融資を実施する。当面は一部の企業限定のサービスだが、段階的に融資対象を拡大していくという。
個人向け融資の世界にも新しい動きが見られる。クラウドファンディング事業を手掛けるCAMPFIREは、クラウドファンディングと組み合わせた新しい融資サービスを17年7月からスタートさせた。これは、同社が運営するクラウドファンディングのサービスを使って資金調達に成功した企業を対象に、100万円を上限に融資を行うというもの。現在は企業のみが対象だが、個人にも融資対象を拡大するとしている。
従来、こうした融資サービスは、法人なら主に銀行などの金融機関が、個人なら消費者金融やカード会社が担ってきた。だが、既存の金融事業者があらゆる資金ニーズに対応するのは、そもそもかなりの無理がある。ひとくちに資金ニーズといっても、置かれている状況はさまざまだからである。
大きく分けると融資の分野には、日々の短期的な資金ニーズに対応する運転資金の融資と、長期的な成長資金を提供する融資の2つがある。
商品を仕入れて、それを顧客に販売する事業者の場合、先に商品を仕入れなければ販売できないケースが圧倒的に多い。小売店はその代表例だが、店頭に商品が並んでいなければ話にならない。メーカーや卸業者との関係にもよるが、先に商品を購入することが多く、まずはそこで資金が出ていく。
その後、商品が売れれば顧客から代金を徴収できるので、ここでようやく事業者はキャッシュを手にすることができる。つまり資金の「出」と「入」にはタイムラグが存在し、ここを埋める資金が必要となるわけだ。商品の売れ行きが良い場合はなおさらで、事業者は欠品にならないように在庫の数を増やす必要が出てくるため、ますます多くの運転資金を必要とする。こうした資金ニーズに対応するのが短期融資である。
一方、建物や設備などを建設・更新するための資金は長期融資の対象となる。建物は何十年も使用するものなので、金額が大きく、融資も長期的なものとなる。
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