不人気だった「ガスト」が再び成長している理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/3 ページ)
安いだけでパッとしない店――。そう言われていたガストだが、近年の業績は好調だ。どのようなニーズに対応したことで、新たな顧客層を取り込んでいるのだろうか。外食ジャーナリストの長浜淳之介氏が解説する。
大手外食チェーン、すかいらーくが好調だ。第2四半期の連結業績(2017年1月〜6月)は、売上高が1762億円(前年同期比1.8%増)、当期利益が78億円(同0.9%増)と増収増益を達成。店舗数も半年間で24店増えた(計3092店)。
この好調をけん引しているのがファミリーレストラン「ガスト」の既存店売上だ。出店して1年以上経過した既存店では、対前年同期比で売上高1.2%増、客数0.2%増、客単価1.0%増と、主要な指標が全てプラスになっている。
つい5年くらい前までのガストは、高校生が集まってワンドリンクを注文して騒いでいるイメージで、「食べたいものがない」「特徴がなく、安いだけでパッとしない店」と言われていた。
そういった負のイメージを払拭(ふっしょく)し、新たな顧客を開拓したからこそ、すかいらーくは14年10月、約8年ぶりに東証一部上場に復帰でき、その後も成長を続けている。
「2人席」を増やしてニーズに対応
ガストのV字回復を目指して、同社は13年から店舗の改装に力を入れている。17年6月末時点で765店舗の改装が完了した。
ファミレスは文字通り、ファミリーが食事を取るために開発された業態だったが、創業から40年以上経過し、顧客のニーズも変化してきた。従来は4〜6人が掛けられるテーブル席ばかりで構成してきたが、核家族化、未婚化が進み1〜2人で来店する顧客が増えたため、2人席を多くつくるように席の構成を変えた。
一方で、女子会などで8〜10人と従来よりも多い人数で来店するケースも増えており、隣のテーブルとくっつけて対応できるように、工夫して席を配置している。つまり、今はフレキシブルにさまざまな人数のグループに、対応できるようになっている。
また、内装の色調も、シニア世代にも来店してもらえるような落ち着いた木目調などに変わっている。高校生が我が物顔で占拠して暇つぶしをするような雰囲気は一掃されている。
居心地の良い、話しやすい環境をつくり出すために、席の背もたれを高くしたり、席と席の間にパーテーションを導入したりすることで、個室感を確保。壁には書棚を設け、絵画や写真を飾るなどといった演出で、家のリビングのようなくつろげる雰囲気に変わっている。
この他、トイレの増設、分煙の強化、駐車場スペースの拡大など、ハード面の改善に力を入れたことで、ブランドイメージを一新した。
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