24時間営業縮小から思う「地方創生」の真実:小売・流通アナリストの視点(1/4 ページ)
早朝深夜営業における人手不足などによって24時間営業の小売店や外食チェーンなどが減少している。そうした社会情勢と地方のつながりについて考えてみたい。
「日経ビジネス」2017年9月25日号で「寝るな日本人 国は夜から衰退する」というタイトルの特集が組まれていた。昔に比べて、日本人の夜間の活動量が低下しているために、夜間消費が低迷し、経済的にも悪影響を与えている、といった趣旨なのであるが、感覚的にうなずける話が多かった。
記事によれば、札幌や大阪の繁華街は日本人客が大幅に減少し、地元の店は訪日外国人客頼みだということや、公共交通の充実している首都圏ではクルマを持つ若者が少なくなったため夜の活動が低下した、もしくは、スマートフォンの普及で対面コミュニケーションの必要性が薄れたという。恋愛しない若者が増えたことで、デートカー需要がなくなり、クルマは不要となった、というやや強引なくだりもあったが、夜の活動量が減っているというのは多くの人が実感していることだろう。
こうした夜間消費の停滞がなぜ今取り上げられたかといえば、需要の低迷というよりは、早朝深夜営業における人手不足から人件費が高騰し、採算が維持できなくなった、という状況が発端だろう。それも、これまでは人口増加を維持してきたため、パート、アルバイト確保でそこまで苦労しなかった首都圏までが人手不足にという点で話題性があったと思われる。
ただ、都会の人は、深夜早朝営業といえば大都市圏の話であって、地方で24時間営業しているのはコンビニエンスストアぐらいだと思うだろうが、実はそうではない。スーパーマーケットの24時間営業というのは「地方発」だという意外な事実をご存じの人は少ないのではないだろうか。
地域製造業と24時間営業の関係
スーパーマーケットの24時間営業の歴史は、日本では中国地方からと言われている。諸説あるようだが、広島県東部から岡山県臨海部を地盤としていた「ハローズ」という地方食品スーパーがその元祖だとされており、現在でもほとんどの店舗が24時間営業を続けている。人口が少なくはないが、大都市のように人口密集してもいない広島東部、岡山でどうして24時間営業を始めたのかといえば、この地域は製造業が盛んで、3交代制で勤務する労働者が相当数いたため、夜間早朝にも買物する需要があったということらしい。現在、全国各地に24時間スーパーは存在するが、その大半が同様の消費者をターゲットとして広がったものだという。
考えてみれば、公共交通での通勤を前提とする首都圏、京阪神の住民の多くは、公共交通の営業時間に合わせて生活している。加えて、大都市周辺では24時間稼働するような製造業の工場の多くが、郊外や海外に移転してしまったため、その傾向はさらに顕著となった。首都圏の駅周辺の住宅街において、終電以降にスーパーが店を開いていたとしても、客が来る可能性は多くない。公共交通が十分に機能している街は安価で便利な移動手段を提供されているが、時間制約があり、その営業活動を終電後に設定すること自体が非効率なのである。
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