マツダCX-8 重さとの戦いを制した3列シートの復活:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)
マツダが発表したSUVの国内フラッグシップモデルであるCX-8。このクルマの大きな存在価値である3列シートについて今回は意見を述べたいと思う。
9月14日、マツダはSUVの国内フラッグシップモデルであるCX-8を発表し、同日から予約受付を開始した。発売は12月14日となる。
17年10月現在、マツダがラインアップしている3列シート乗用モデルはプレマシーとビアンテの2車種。ビアンテは販売中ながらすでに製造を終了し、在庫販売のみという状態だ。それに先だってMPVは昨年からカタログ落ちしている。いずれのモデルも、後継モデルの開発は行われておらず、プレマシーも遠からず販売終了となるだろう。
3列シートモデルの抜本的見直し
「Be a Driver」を標榜し、「もっともっと、人とひとつになるクルマを」というマツダのクルマ作り思想の中で、残念ながら従来の3列シートモデルはそのブランドイメージに合致しない。ブランド戦略として、マツダのクルマは全車種がマツダらしい走りであるべきだとする中で、多人数乗車モデルには抜本的な見直しが必要だったのである。
特にいわゆる5ナンバーミニバンに属するビアンテは厳しい。このリーグはトヨタ・ノアにせよ日産セレナにせよ、ホンダ・ステップワゴンにせよ、エンジニアリング的にはほとんどミッション・インポシブルな世界にいる。乗り降りのために低床優先で床厚が取れず、サイドシルも床面と同じ高さが求められる。ウォークスルーのためにセンタートンネルもなし、要するに平らで薄い板にせよということで、これだけ要件がキツいと床ではシャシー剛性を出せない。
では上屋でと思っても、こちらもスライドドアもテールゲートも可能な限り開口部を大きく採らねばならない。さらに多人数と荷物を満載してちゃんと走る動力性能が必要で、ファミリーユースという特徴上、運転アシストも満載にしなければならない。
それだけあれもこれも求められた上に、極め付きは「ライバルより安く」。現在なら最廉価モデルは240万円に収めなくてはならない。エンジニアリング思想が入り込む余地がほとんどない。ユーザーニーズだけで成り立っているカテゴリーなのだ。だからマツダが3列シートの多人数乗車モデルを廃止にするという日本経済新聞のスクープ記事を読んだとき、「そりゃそうだよな」と思ったのだ。
しかし、現実に3列シートの多人数乗りモデルにもニーズはある。「人とひとつになる」条件を満たしつつ、多人数乗車ができるクルマは作れないかと考えたとき、自ずと思い浮かべるのは対米輸出の主要モデル、CX-9の存在だ。しかし全長119.4インチ(5065mm)、全幅は77.5インチ(1970mm)の巨体では日本ではさすがに持て余すことになる。ちなみに、カッコ内は筆者の換算だが、日本の法規は5mm刻みなので、それに合わせてある。参考までにCX-5は全長4545mm、全幅1840mmとなっている。
マツダはサイズを見直すにあたって、横幅に注目した。結論から言えば、CX-8は、CX-9のシャシーをベースにしつつ、全幅をCX-5に合わせて生まれたクルマだ。そのディメンションは、全長4900mm、全幅1840mmとCX-9との比較ではコンパクトになった。お気付きだろうが全幅1840mmはCX-5と同寸法で、実際ボンネット、フロントドアといった部分はCX-5と共通部品だ。
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