フィンテック連携の“ハブ”を目指す三井住友FG:AIで不正を検知(1/3 ページ)
三井住友フィナンシャルグループが開発に力を入れるのがAIを活用したサービス。カード不正利用検知の精度を向上し、業務の効率化、高度化を図る。ITなどの異業種と連携して新サービスを生み出すためのハブとして機能していきたい考えだ。
特集「メガバンク × フィンテック」:
金融ビジネスの最前線にあるFintech(フィンテック)。モバイル決済やAI(人工知能)を活用した資産運用などのサービス、仮想通貨など、日本でも取り組みが広がりつつある。国内金融業界で圧倒的な規模を誇るメガバンクも動き始めた。なかでも、ベンチャー企業や異業種企業と協業を探る、従来の金融ビジネスと一線を画す取り組みが注目を浴びる。メガバンクの取り組みから、金融サービスの将来像を探る。
10月上旬に開催された、IoTなどの最新技術が披露される展示会「CEATEC JAPAN 2017」。ここに、三井住友フィナンシャルグループ(FG)が初めて出展した。
展示したのは、IDとパスワードの代わりに指紋や声、顔で本人確認する生体認証のプラットフォーム。インターネットバンキングやネット通販などへの活用を見込む。外部の企業と連携して開発した技術だ。デジタル技術を活用してビジネスチャンスをつかもうと、積極的な動きに乗り出していることが分かる。
このような取り組みを推進しているのが、2015年に新設したITイノベーション推進部。ベンチャー企業などが持つアイデアや技術を取り入れながら、新しいビジネスの開発に取り組む組織で、ITや鉄道などの異業種から転職してきたメンバーが半数を占める。その担当者に、三井住友FGが注力するフィンテックの取り組みやその狙いを聞いた。
AIでカード不正利用検知の精度を向上
三井住友FGが開発に力を入れる分野の1つが、人工知能(AI)を活用したサービスだ。ITイノベーション推進部オープンイノベーショングループ長の桑原敦史氏によると、「AIについては、10以上の実証実験を進めている」という。
その1つが、クレジットカードの不正利用を検知する技術。不正の疑いがある取引を検知するシステムは現在もあるが、AIを活用することでその精度を高めることができるという。
現在のシステムでは、カード利用の金額や時間などを規則的にチェックし、不正取引や不正の疑いがある取引を検知する。しかし、特定の条件を満たす取引を見つける「型にはまった抽出」(桑原氏)であるため、実際は不正ではない可能性もある“グレー”の取引を多く検知してしまう。
数多く検知された疑わしい取引の1つ1つを詳しく調べるのは、人だ。店舗や利用者に問い合わせをして確認する必要がある上、そのほとんどは問題がない取引だという。
本当に不正利用された取引を見極める精度を高めれば、問題のない取引まで確認する必要がなくなる。それを実現するために期待しているのが、AIによる学習だ。過去のカード利用に関するデータをAIに学習させ、不正利用を検知するアルゴリズムを開発した。
実験を重ねると、疑わしい“グレー”の取引を検知する件数が大幅に減ったという。ITコンサルティングを手掛けるJSOLと共同で、実用化に向けた実証実験を進めている。
関連記事
- 三井住友FG、新ビジネスに向け“飛び込み歓迎”の新拠点
三井住友FGが、新規事業開発に向けたビジネス拠点を東京・渋谷にオープンした。外部企業からビジネスパーソンを招き、セミナーやハッカソンなどを定期的に開催する。有望なアイデアを持つ人材を見いだし、新ビジネスの創出に向けたアイデアを得る狙い。 - 三菱UFJがベンチャーと「ギブ&テイク」で生み出す価値
三菱UFJフィナンシャル・グループがベンチャー企業と新事業の創出を目指すプログラム「MUFG Digital アクセラレータ」。ベンチャーが持つ技術とアイデアを重視する背景にある、メガバンクの課題とは……。 - 将来稼ぐ力を予測する「AI融資」の狙いとは
ソフトバンクとみずほ銀行が、AIを活用した個人向けの融資サービス「AIスコア・レンディング」を展開している。同サービスでは、AIが利用者の「将来稼ぐ力」を分析し、適切な金利を決めているという。その狙いとは……。 - フィンテックで「異業種連携」が進む理由
スマートフォンを使ったモバイル決済など、手軽に利用できるフィンテックのサービスが増えてきた。進歩のポイントとなるのが、金融をはじめとするさまざまな業界や規模の事業者による連携。多くの企業が参加するFintech協会に、日本のフィンテックの現状と今後について聞いた。 - 三菱UFJ「約1万人削減」 銀行員受難の時代がくる
銀行員が再び受難の時代を迎えようとしている。各行は低金利による収益低下とフィンテックの普及(異業種の参入)という2つの課題に直面しており、大幅なコスト削減が必至の状況だ。銀行業界は近い将来、大量の人員削減を余儀なくされる可能性が高いだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.