なぜカルビーは「やめられない、とまらない」を社員が考えたことにしたのか:スピン経済の歩き方(1/5 ページ)
「やめられない、とまらない」――。かっぱえびせんのCMコピーを編み出したという元広告マンが、「名誉」を傷つけられたとしてカルビーを訴えた。カルビー側は「コピーは社員が考えた」としており、両者は争うことに。この問題、なぜモヤモヤするのかというと……。
先週、スナック菓子愛好者たちがビックリするようなトラブルが報じられた。
日本人ならば誰もが一度は口ずさんだことのある「やめられない、とまらない」という「かっぱえびせん」のCMコピーを編み出したと主張する御年80歳の元広告マンが、「名誉」を傷つけられたとしてカルビーを訴えたのだ。
本件を報じた『週刊新潮』によると、この方は「かっぱえびせん」が最初に広島と東京で放映したCM制作を請け負った大広の元担当者。えびせんをつまみながらコピーを考えていたところ、「一袋目を食べ、もう一袋を開けようとした時、“思わず手が出る やめられない とまらない”といったフレーズが閃いた」(週刊新潮 2017年12月21日)と主張されている。
その後、かっぱえびせんのCMは大広から他代理店が扱うこととなり、全国で放映され国民的菓子として大人気を博したのはご存じのとおりだが、どういうわけか「やめられない、とまらない」という文句の発案者は近年まで不明とされてきた。
それを知った元広告マン氏が2010年にカルビーに対して、我こそが「生みの親」だと手紙で伝え、伊藤秀二社長にも誕生秘話を直々に伝え大いに喜ばれたという。
元広告マン氏も自分の実績が認められハッピー、歴史に残る名コピーのルーツがクリアになったカルビーもハッピー、どこにもこじれる要素など見当たらないと思うかもしれないが、きっかけはカルビー側の不可解な対応だった。
元広告マン氏の誕生秘話はカルビー社内報に掲載される運びとなったものの、待てど暮らせどいっこうに掲載されなかった。さらに、そのうちにテレビ番組や新聞記事などで、あのコピーはカルビー社員が考えたという説明をするようになったのだ。
これではまるで自分が嘘をついているみたいではないか――。かくして生みの親としてプライドを傷つけられた元広告マン氏は、今年7月に1億5000万円の損害賠償請求をカルビーに提訴した、というわけである。
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