仮想通貨で資金調達 投資家をどう守る?:規制か、それとも育成か(1/2 ページ)
国内外で盛り上がりを見せるICOだが、一方で投資側にはリスクもある。中国や韓国はICOの利用を禁止することを発表したが、日本は規制については“様子見”の状況だ。
仮想通貨に関する話題が豊富だった2017年。ビットコイン決済を導入する店舗が増え、給料の一部をビットコインで支払うという企業も出てきた。
そうした中、新たな資金調達の手段として仮想通貨を活用する動きも広がってきている。それがICO(新規仮想通貨公開)だ。
ICOは、資金を集めたい企業が「トークン」と呼ばれる独自の仮想通貨を発行し、投資家がそのトークンを既存の仮想通貨(ビットコインなど)で購入することで事業資金を調達するという仕組み。トークンの所有者は、発行した企業のサービスを割安で利用できるなどの特典を受けられたり、そのトークンの価格が値上がりしたタイミングで売ることで利益を得ることができる。
資金調達をする企業は、エクイティファイナンス(株式による資金調達)のように、経営の決議権を手放したり、出資者に利益の配当を行う必要もないので、特に資本体力がないベンチャーにとって大きなメリットがあるとしている。
全世界でICOによる資金調達額は15年時点では約46億8000万円だったが、今年は1528億円に達し、急成長している。
日本では、愛知県名古屋市にあるベルギービール専門のダイニングバー「サンタヌー」が今年7月に、東京進出のための資金を集めるためにICOを実施し、約1000万円の調達に成功。ブロックチェーン技術を活用したソーシャルメディア「ALIS」は、9月にICOを実施し、4分で約1億円を調達して話題となった。この他に、ICOの支援サービス「COMSA」が100億円を調達している。
大手企業もICOの活用を表明している。Q&Aサイト「OKWAVE」などを運営するオウケイウェイヴは12月、子会社のOKfincが出資するシンガポールのWowoo社のICOプラットフォームを通じて、ICOを実施すると発表した。実施時期や資金用途は未定。
オウケイウェイヴの兼元謙任社長は「当社が運営するQ&Aサイトには4600万件の『ありがとう』(回答者へのお礼)が送られている。しかし、これだけ多くの価値を提供していても、お金は集めにくかった。サービスに共感してくれる支援者を世界中から集めて、サービスを拡充していきたい」と話す。
「仮想通貨は世界をつなぎ、世界を変えるテクノロジーだと思っている。私たちは仮想通貨に賭けることにした」(兼元社長)
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