「ブラック企業」なぜ消えぬ “厚労省リスト”の効果とは:掲載企業は氷山の一角だ(1/4 ページ)
厚生労働省は5月、労働基準関係法違反の疑いで送検された国内企業のリストをネットで公開した。“ブラック企業リスト”として話題となった。しかし、7カ月が経過した現在も、追加される企業は後を絶たない。リストに効果はあったのだろうか。ブラック企業はなぜなくならないのだろうか。
電通で女性新入社員が過労自殺する事件が起きてから、はや2年が経過した。日本政府は残業規制などの「働き方改革」を推進し、賛同する企業も増えてきた。だが、長時間労働や残業代の未払い、セクハラ・パワハラなどが横行する“ブラック企業”は依然として多い。
労働基準関係法の順法意識を高めるため、厚生労働省は5月、同法違反の疑いで送検された国内企業のリストをインターネット上に公開。電通やパナソニック、ヤマト運輸など大企業も名を連ねる“ブラック企業リスト”として話題となった。
しかし、公開から7カ月超が経過した現在も、従業員に「36協定」で合意した延長時間を超える違法な長時間労働を課した企業や、従業員に定期賃金を支払わなかった企業などが毎月のように追加されている。
ブラック企業リストは、違法労働の抑止力として機能しているのだろうか。従業員を不当に扱うブラック企業は、なぜなくならないのだろうか。日本企業の労働問題に精通し、企業の労働環境改善に向けたコンサルティングなどを手掛ける“ブラック企業アナリスト”こと新田龍さんに話を聞いた。
ブラック企業リストの効果は?
――厚労省によるブラック企業リストの公開は、どのような効果があったとお考えですか。
新田氏:電通での若手社員の自殺、石井直社長(当時)の引責辞任、リストへの掲載といった一連の流れは、ビジネス界を驚かせたと感じました。
労働時間を適切に管理しなければ、社長辞任にもつながる“大ごと”に発展し、社名公開という社会的制裁も受ける――と実感し、危機感を覚えた経営者は多いでしょう。
また、従来は知名度の低い地方の中小企業が労基法違反を起こしても、メディアが報じず明るみに出ないケースが多くありました。ブラック企業リストがこうした企業も掲載し、スポットライトを当てた意義は非常に大きいと考えています。
関連記事
- 厚労省“ブラック企業リスト”494社に 危険な環境下での労働多発
厚生労働省が“ブラック企業リスト”を更新。従業員を危険な環境下で作業させた企業が多く追加された。 - 「ブラック企業大賞2017」発表 大賞は「アリさんマークの引越社」
「ブラック企業大賞2017」が発表。大賞は「アリさんマークの引越社」が受賞した。Webサイトからの一般投票で決まる「ウェブ投票賞」は、日本放送協会(NHK)だった。 - 元人事が語る「ブラック企業」の見抜き方・抜け出し方
「ハードワークで低賃金」「福利厚生が未整備」といった環境下で働いており、「自分の会社は『ブラック企業』かもしれない」「会社に残るべきか、辞めるべきか」――などの悩みを抱えている人の指針になるのが、「人生を無駄にしない会社の選び方」だ。 - 女性記者の過労死問題で、なぜNHKはウソをついたのか
NHKの女性記者が「過労死」していたことが分かった。2013年7月にこの女性は亡くなったわけだが、なぜNHKはこの大きな問題を伏せていたのか。 - 厚労省「1月5日は休みましょう!」 現実は……
厚生労働省が「1月4日と5日を休んで11連休に!」というキャッチコピーで、年末年始休暇に有給休暇を組み合わせるように呼び掛けた。政府は20年までに有給取得率を70%に引き上げる目標を掲げているが、現実は……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.