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「仮想通貨はバブルなのか」という議論は不毛だ“いま”が分かるビジネス塾(4/4 ページ)

現時点において仮想通貨がバブルかどうかを判断するのはナンセンスだと思っている。むしろ仮想通貨に今後、どのような利用形態があり得るのか(またはないのか)について議論した方が建設的だろう。

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上昇余地はあるのか

 以上を整理した上で、仮想通貨の価格水準について改めて考察してみたい。先ほど筆者は、ニッチでマイナーなポジションであれば、国際的な決済手段や資産保全手段として仮想通貨が存在する余地があると述べた。これを前提条件にすると、現時点の価格がバブルなのかについても、ある程度までなら推測できる。

 世界における全金融資産の0.1%程度が仮想通貨に置き換わる可能性があり、そうした状態を市場が織り込んでいると仮定してみよう。

 現時点における世界の金融資産の総額は約2京円だが、この0.1%が仮想通貨に置き換わった場合、仮想通貨の時価総額は20兆円となる。1%なら200兆円である。ちなみに現時点のビットコインの時価総額は22兆円、イーサリアムは13兆円なので、0.1%と仮定するなら割高である。もし1%まで拡大すると見るならまだ上昇余地が存在するとの解釈になる。

 0.1%の場合、日本の金融資産総額や世帯数から考えると、1世帯当たり3万円ちょっとの保有額ということになる。この数字をあり得ると考えるのか、あり得ない、もしくはあってはならないと考えるのかは人によってさまざまだろう。

 私たちは予言者ではないので、数字の是非について感情的に議論しても意味はない。これは1つの仮定に基づいた演繹(えんえき)的な推論であり、こうした見立てが集約された結果として、最終的な市場価格が形成される。それが市場の本質である。重要なことは、多くの人が、自身の見立てで物事を考えることである。

 筆者は、国際的な決済手段や資産保全手段としての利用を想定してこの推論を行ったが、最近では、別の用途も浮上している。それはICOと呼ばれる仮想通貨を使った資金調達である。

 いろいろと問題が生じる可能性がある手法だが、ICOには大きなポテンシャルがあり、これが拡大した場合、仮想通貨の時価総額についても見直しが必要となるかもしれない。ICOについては次回、より詳しく解説していく。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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