自己成長するAIは「医療機器」として安全なのか:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
多くの業界でAIによる従来業務の置き換えが検討されているが、医療はこうした動きが激しい業界の1つである。特に診断の領域では、AIが医師に圧勝するケースが続出しており、業務のAI化が一気に進みそうな状況となっている。業務のどの範囲までAI化を行い、人の責任の範囲をどこまで設定すべきなのか。医療分野における取り組みはあらゆる業界にとって参考となるだろう。
以前から予想されていたことではあるが、医療分野におけるAI(人工知能)技術の進歩はめざましい。2016年にオランダの大学が実施した乳がんの画像診断コンテストの結果は、AIが完全に実用段階に入ったことを印象付けた。
このコンテンストは、患者から採取したリンパ節の顕微鏡写真を使って、乳がんの転移を見つけ出すというものだが、人間の医者に混じって、AIを使った画像アルゴリズムも競技に参加した。
時間制限なしの場合、人間の判定とAIの判定はほぼレベルだったが、時間制限ありの場合にはAIの判断が人間の判定を大きく上回った。実際の医療現場では、限られた時間の中で結果を出すことが求められる。これは1つの事例でしかないが、AIを導入した方が明らかに効果的な分野が存在することが改めて立証された。
病変の組織や細胞を使って各種の診断を行うのは病理医の仕事だが、病理医の世界は、自身の目と経験を頼りにする職人技の世界である。病理医が一人前になるまでには10年の期間が必要ともいわれており、特に日本では慢性的な病理医不足に悩まされている。
AIの判定が人間を上回るのであれば、病理医は最終的なチェックのみを行い、基本的な判定はAIが行うという手法がかなり現実味を帯びてくる。
これは病理診断におけるAIの応用だが、画像解析の技術はレントゲンやCTスキャン、あるいはMRI(核磁気共鳴画像装置)など、臨床の分野にも応用できる。基本的な診断の大部分をAIに代替させることも理論的には可能となるだろし、それを実現するAI技術も次々に開発されている。最終的には得られた情報を総合して所見を作成することや、治療方針の立案を行うことも可能となるだろう。
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