「この話なら誰にも負けない」を探そう:人生やらなくていいリスト(1/2 ページ)
大勢の人たちの前で何かについて話すということを苦手にしている人は多いだろう。そんな人でも大好きな物事の話ならきっとできるはず。「この話なら誰にも負けない」というものを探そう。
編集部からのお知らせ:
本記事は、書籍『人生やらなくていいリスト』(著・四角大輔、講談社+α文庫)の中から一部抜粋し、転載したものです。記事内の写真は四角氏のInstagramから許諾を得て掲載しています。
うまく話せなくてもいい
ぼくはずっと、人と話すのが苦手だった。
いまでも、初対面の人と話す時は緊張するし、仕事で大人数を前に、プレゼンしたり講演する時、顔が熱くなる。40歳を過ぎてやっとマシになってきたけれど、それまでは、人前で話した後はいつも、自分がイヤになってとことん落ち込んでいた。
「なぜうまく話せないんだろう」「自分にはコミュニケーション能力がない」。かつてのぼくのように、こう悩んでいる人も多いはず。でも、落ち込むことはない。たった1つだけでいい。自分が大好きな何かについて必死に話をして、他人に興味をもってもらうことができればいいのだ。
ぼくが新卒で入ったのは、ソニー・ミュージックエンタテインメント。こういった音楽業界は、華やかなイメージが強いだろう。でも当時のぼくは、いわゆる「業界に就職しそうな学生」ではなかった。通うのは人気のイケてる大学でも、一流大学でもない。最新のトレンドにはうとく、リーダーシップもなかった。
強烈な個性が集まる集団面接での自己アピールも不得意。人前で歌うカラオケも苦手、楽器もダンスもできない。楽譜も読めず、音楽的素養はナシ。さらに、体系立てて音楽を聴くような音楽マニアでもなかった。
当時、ソニーミュージックの応募用紙には、白紙のA4スペースを使って「自分を表現せよ」という項目があった。ぼくはその真ん中に、渓流の野生魚アマゴの写真を貼り、小学生からの夢だった、その魚を釣り上げるまでのリアルな実話を書いた。
後述するが、ぼくはフライフィッシングを究めるために、ニュージーランドの湖=釣り場に移住してしまったほどの釣り好き。釣りをしている時がもっとも幸せで、当時、頭の中は釣りのことばかり、生活における最優先事項は、湖に通うことだった。
当時はまだ、「複数の人間を前に、何かについて話す」なんてことは、何より苦手だったけれど、釣りの話ならいくらでもできた。高学歴で、流行に精通しておしゃれな人は無数にいただろうが、ぼくほど「釣りに時間と情熱」を費やしている同世代は、そんなにいなかったろう。周りから浮いて、変人と言われるような、「釣りを中心とした生き方」が、意図せず自然に、ぼくに「独創的な発想」をもたらし、ぼく自身をクリエイティブにし、「独特の存在」にしていたのだ。
しかも、レコード会社志望の応募者の中において、ぼくのようなキャラクターは、間違いなく「オンリーワン」だったはずだ。面接官は、必ず、ぼくの応募シートの例のA4スペースに目をとめる。そして、まずそこから質問が飛んできた。当然ぼくは、釣りの話ならいくらでもできた。すべての面接が、その話に終始し、音楽の話をしたことは、ほぼなかった。
その、「好きなことを、熱く楽しく、しかも手短にわかりやすく話せるところ」に可能性を感じてもらい、ぼくは内定を取ることができた。たかが「釣り」の話で、約400倍という熾烈な競争率を突破したのだ。
話す内容はなんでもいい。まずは1つ「この話なら誰にも負けない」というものを探してみよう。「ウケる」「ウケない」は、この段階では考えなくていい。ぼくの成功体験を参考にしていただくために、面接までにしたことを、順を追って書いてみたい。
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