急成長する「伝説のすた丼屋」 模倣を難しくしている独自の調理法と秘伝のタレ:長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)
ボリューム満点の「すた丼」を提供する「伝説のすた丼屋」が急成長している。かつては学生街を中心に出店していたが、商業施設内やロードサイドにも進出するようになった。すた丼は見た目が豪快だが味は繊細で、模倣が難しい料理だ。独自のビジネスモデルとすた丼の調理方法に迫る。
「すた丼」は東京の多摩地区発祥の丼だ。並盛でも通常の1.5倍はあろうかというボリューム満点のご飯に、秘伝のにんにくしょうゆダレで炒めた豚肉が豪快に盛られ、生卵を落として食べる。このいかにもスタミナ満点なすた丼をメイン商品とする「伝説のすた丼屋」が全国に拡大している。
伝説のすた丼屋を展開するアントワークス(東京都中野区、早川秀人社長)によれば、店舗数は国内75店、海外3店の計78店にまで伸びている(2018年3月現在)。10年前は13店ほどだったので、6倍に急成長したことになる。他業態を含めて年商は65億円だ(2017年7月期)。
すた丼1杯の基本料金は630円(税込、以下同)だが、量が多いとはいえ、牛丼などに比べると値段が高く感じられる。それでも、顧客から高く評価されているのは、注文が入ってから中華鍋で手間をかけて調理しているからだ。
多摩のローカルB級グルメだったすた丼が、全国制覇が視野に入るまでに発展した軌跡を追ってみた。
もともとはラーメン店のまかない飯
すた丼発祥の店は、東京都国立(くにたち)市にある「サッポロラーメン 国立店」である。1971年に開業した同店は元ボクサーの橋本省三氏が経営していたが、面倒見の良い人柄もあって、従業員向けにスタミナ満点のまかない飯を考案。それがすた丼だった。
まかない飯がルーツなので、すた丼には「安くて美味くてお腹一杯になる」という、B級グルメの基本的要素が凝縮されている。すた丼のうわさが広まり、いつしか店の正式なメニューとなって、気付けばラーメンを食べに来る人よりもすた丼目当ての顧客が店を占拠するようになった。
国立は一橋大学、都立国立高校、都立第五商業高校、国立音楽大学附属高校などがある学生街で、食べ盛りの男子学生にすた丼は支持された。
“おやじ”と従業員に慕われた橋本氏は87年に50歳の若さで逝去。当時、営業していた3店舗は、それぞれの店長に将来が委ねられた。1人が「サッポロラーメン 国立店」を継ぎ、残りの2店舗を運営していた会社が統合して生まれたのがアントワークスである。従って、アントワークスと「サッポロラーメン 国立店」の間に、現時点で直接のつながりはない。
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