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「1カ月の夏休み」は夢? 日本人の“有給の取り方”がズレている、歴史的背景:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/5 ページ)
月曜を午前半休にする「シャイニングマンデー」。経産省内で検討していると報じられたが、そんな取り組みは「無駄」。日本人は、世界では当たり前の「有給休暇をまとめて取る」こともできていないからだ。なぜできないのか。歴史をさかのぼると……。
なぜ欧州では、ひと月近く休むのか
さかのぼること今から100年前、20世紀初頭。「精神的かつ知的な休息は、労働者の健康のために不可欠である」との理由から、週休とは異なる連続休暇をを取ることが労働者の権利だとする考え方が欧州の労働組合に存在していました。
1926年にはスウェーデンの労働者に「有給休暇」という概念が広まっていて、35年にはほとんどの欧州諸国の企業が、労働者に有給休暇を与えていたとされています。
そこでILOは36年、「1年以上継続して働く全ての労働者は、連続した最低6労働日の有給休暇を享受する」とした条約(第52号条約)を定め、「この最低基準を超えるものに関してのみ、特別に有給休暇の分割を認める」としたのです。
第52号はその後改訂を重ね、現在は70年の第132号条約が世界基準です(以下抜粋)。
- 労働者は1年間の勤務につき3労働週(5日制なら15日、6日制なら18日)の年次有給休暇の権利をもつ
- 休暇は原則として継続したものだが、事情により分割も可
- ただし、分割された一部は連続2労働週を下回ってはならない
- 祝日や慣習上の休日は年次有給休暇の一部として数えてはならない
つまり、20日間の有給休暇が付与されている場合、少なくとも10日は連続して休むことが求められる。ところが残念なことに、日本はこの条約を批准していないのです。日本は先進国の中では珍しくILOの条約のいくつかを批准していないのですが、そのうちの1つが「年次有給休暇に関する条約」です。
日本人の夏休みはせいぜい1週間ですが、欧州ではひと月近く休むのが当たり前なのもこのためです。
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