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「地方の障害者雇用」を創出するリクルートのテレワーク働き方改革で「地方格差」なくせ(1/5 ページ)

「障害者雇用の水増し」は自治体や裁判所などにも拡大している。望むべき姿は、障害のある人が、障害のない人と同じように普通に働ける環境を作ることだ。その理想に向けて取り組むリクルートの子会社を取材した。

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 中央省庁が障害者雇用を水増ししていた問題は、自治体や裁判所などにも拡大している。国は障害者の法定雇用率をクリアしていない企業に納付金を求めていながら、自らは障害者の雇用者数を水増しして、法定雇用率を満たしているかのように装っていたのだ。

 この問題の背景には、障害者の雇用政策を法定雇用率ありきで進めてきた「ひずみ」があることは、前回の記事で慶應義塾大学の中島隆信教授に指摘してもらった通りだ(関連記事)。

 望むべき姿は、障害のある人が、障害のない人と同じように普通に仕事ができる環境づくりを進めることではないだろうか。今回は、その理想に向けて取り組んでいる企業を取材した。

仕事を頑張るより、体調が大事

 「皆さん、今日は体調にお変わりありませんか? 台風が西日本に近づいていますよね。東京の天気も荒れてきました。今日はこのあと午後1時に打ち合わせが入っていますが、何か困ったことがあればいつでもお声がけくださいね」

 午前9時30分。東京・勝どき駅近くにあるオフィスビルに入居する、リクルートオフィスサポートのフロアでの会話だ。「在宅雇用開発室」のデスクで、鈴木晃博さん(47歳)はPCに向かい、Skypeの画面に笑顔で語りかけている。画面には遠く離れた北海道に住むスタッフ8人の顔が映っていた。鈴木さんはその8人を束ねる「班長」として、この日の仕事内容を説明し、仕事を割り振っている。

 テレビ電話での朝礼や、にこやかに話をする姿は、テレワークの職場としては何の変哲もない光景だろう。ただ、一般的なテレワークの職場とは違った点がある。それは、鈴木さんも、北海道在住の8人も、全員「障害者」だということだ。

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午前9時30分「在宅雇用開発室」での朝礼の一コマ。社員は障害とともに生きている

 リクルートオフィスサポートは、従業員317人中271人の障害者が働く、リクルートの「特例子会社」だ。企業が障害者の雇用に特別な配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たせば、特例としてその子会社で働く人を親会社やグループの障害者雇用率に算定できるのが特例子会社を設立する理由だ。

 鈴木さんが所属する在宅雇用開発室では、2016年10月から在宅雇用を始めた。いくつかの班に分かれて、リクルートグループ各社が運営するサイトの掲載情報を審査し、確認している。

 鈴木さんは妻と高校生の息子、中学生の娘の4人家族だ。精神障害であるうつ病を患っている。前の会社では残業が多くなると頭痛や吐き気に襲われ、薬を飲まないと眠れなくなり、辞めざるを得なくなった。リクルートオフィスサポートには10年前に就職し、長く働くことができている。

 「この会社が他の会社と大きく違うのは、仕事を頑張りすぎるよりも、体調の方が大事だと掲げていることです。定期健診も充実していて、体調をコントロールしやすい職場です」

 鈴木さんも班長として、北海道のメンバーの体調を毎日確認している。この「体調管理」が、在宅雇用の重要なポイントになっているのだ。

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「在宅雇用開発室」で班長を務める鈴木晃博さん(手前)。うつ病の精神障害がある
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さまざまな障害を抱えながらも皆PCに向かい、黙々と働いていた
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