明らかにされたマツダのEV計画:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)
ここ数年マツダは内燃機関の重要性を訴えており、SKYACTIV-Xを筆頭とする技術革新を進めてきた。中にはそれをして「マツダはEVに否定的」と捉える層もあるが、実はそうではない。EVの必要性や、今後EVが増えていくということを、マツダは一切否定をしていないのだ。
10月2日。マツダは都内で記者会見を開き、マツダのEV開発についての計画を発表した。
ここ数年、マツダは内燃機関の重要性を訴えており、そのために革新的な燃焼技術を採用したSKYACTIV-Xを筆頭とする技術革新を進めてきた。中にはそれをして「マツダはEVに否定的」と捉える層もあるが、実はそうではない。EVの必要性や、今後EVが増えていくということを、マツダは一切否定をしていない。
なぜEVに集中しないのか?
EVは増えていく。しかし時間軸の取り方をもっと長く考えるべきであるとマツダは考えているのだ。マツダが疑義を挟んでいるのは「向こう数年で内燃機関がなくなり、全部がEVに置き換わる」と言う見方に対してだ。
マツダの見通しとしては、そんなに簡単にエネルギー革命は行われない。むしろ新興国を中心にこれから爆発的に販売台数が伸びていく市場では、インフラやコストの制約を受けるためEV化は進まない。年間の新車販売が現状の1億台から1億5000万台へと激増する地球環境の未来を本気で考えるならば、内燃機関のエコ技術の開発はこれまで以上に重要だと主張して来たのである。
マツダは2030年の時点でも、内燃機関を持たないクルマは10%にすぎず、残る90%は内燃機関とモーター両方を搭載するクルマになると考えているのだ。筆者もよく「これからEVの時代になるのですか?」と聞かれるが、おそらく質問者が意図しているような、世の中の過半がモーターだけのEVになり、内燃機関が淘汰されていく未来は向こう20年くらいはないと答えている。内燃機関とモーターのどちらが主動力源かはともかく、その両方を備えるクルマが主流だろう。個人的にはマツダの唱える純EV比率10%は見積もりが少し過少にも思えるが、かと言って過半になるとは到底思えない。
イメージするならば、世の中にガソリンエンジンのクルマとディーゼルエンジンのクルマがそれぞれの長所を生かして共存しているように、内燃機関、ハイブリッド、EV、燃料電池のクルマはそれぞれに最適な役目を与えられて混在する形が向こう20年の姿である。
また「EVは部品点数が減るので今のクルマより安くなる」という主張も耳にする。中国を筆頭に、テスラのギガファクトリーなど、プランとしてバッテリーの大量生産価格逓減をぶち上げた発表こそ多いが、多くは後に発表数値を下方修正し、少なくとも今現在、大量に安く供給できる体制は完成していない。そう何度も狼が来たにだまされているわけにはいかない。
そしてEVの価格の多くを占めるのはバッテリーである。多くの企業が低価格化に取り組んでいれば、やがていつかは価格が下がる日も来るのだろうが、まだまだ技術革新が次々に起きているジャンルであり、むしろ技術革新は価格逓減よりも性能向上に振り向けられている。
ちょうどかつてのPCと同じで、5年前の技術水準のものならば安価になるが、性能的にはゴミ同然。今の標準スペック同士で比較すればそう急激に安くならない。PCが安くなったのは、型遅れのCPUでも十分実用に耐える時代になってからだ。
余談だが、充電済みのバッテリーに積み替えて充電時間を短縮するバッテリー交換方式も同じ理由で現実的ではない。新型カメラが出るたびに旧規格のバッテリーが使えなくなる理由を考えれば分かるだろう。EVの性能向上を決めるのはバッテリーの性能だ。それを規格品で統一してしまったら、もうEVは一切進歩しなくなる。
つまりバッテリーの性能向上が必要なくなるまで、EVは安くはならない。ということは、バッテリーで走る純粋な電気自動車(BEV)は最新技術を投入したモデルが買えるお金持ちの先進国向けということになり、それは当然高付加価値商品ということになる。
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