日本女性の胸「苦しめない」高級下着を 女性起業家、裸一貫からの挑戦:幾度の転職・挫折にも負けず(1/3 ページ)
高級ランジェリーにある女性起業家が参入。大手が寡占する業界を「日本女性向け」のコンセプトで切り開き、高級百貨店での販売にこぎつけた。
高い物では上下1セットで数万円する物もざらという高級ランジェリー。この世界に新ブランドを引っ提げてきた女性起業家がいる。「ナオランジェリー」シリーズを販売するfor Grace(東京・中央)社長、栗原菜緒さん(34)だ。
いかにも若い女性向きの華やかな業界に見えるが、独立系の新ブランドの参入はかなり異例だ。というのも高級ランジェリー市場は伝統的にワコールやトリンプ・インターナショナルといった超大手、後は欧米から輸入される老舗有名ブランドで占められていたからだ。
日用品でありながら、おしゃれにこだわる女性向けの「嗜好品」という側面も持つ高級ランジェリー。長年培われたブランド力がモノを言う世界で、新興のナオランジェリーは最高級の百貨店と評価される日本橋高島屋(東京・中央)で、9月から常設販売されるようになった。
キラキラしているように見えて、特に新参者には甘くない高級アパレル業界。栗原さんにも紆余曲折の過去があった。
外交官の夢破れ職を転々
もともと外交官を目指していた栗原さん。学習院大学を卒業後、外務省で非常勤の公務員として働きながら予備校で外交官の専門職向け試験の勉強に取り組んでいた。
ただ、職場では夢と現実のギャップを実感することに。「上の人の決めたことを調整するのがここの仕事だよ」「偉くなればなるほど物事は決められなくなるんだ」。官僚たちの本音を聞くたびに当初抱いていた熱い気持ちは失せ、就職1年目にして辞めた。
夢破れ、大学の同級生が銀行などで活躍しているのを見ては「自分は底辺にいる」と打ちひしがれた。自分の好きなことを仕事にしようとまずはワインの輸入会社に入ったが数カ月しか続かず。その後、やはり趣味である高級下着を販売するアルバイトに就いた。
初日で店の売り上げナンバーワンになったが、仕事には納得できなかった。商品である補正下着は腹の肉を胸に持っていくようなタイプ。実際に着用して接客したが、自身も体が苦しくて仕方なかった。売れるたびに「コンプレックスのある女性が多いと感じる反面、本当に良いと思える商品を自分は売れてないと痛感した」(栗原さん)。
「どこに行っても私は疑問を抱く。自分が自信をもって売れないのは心地よくない」。ではどんなメーカーの下着なら売りたいのか自問自答した。
栗原さんの好みは欧州などの輸入下着だ。舶来品のデザインが好きなことに加え、日本の高級下着が押しなべて「きつい」ことに違和感を覚えていた。
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