東急がJR北海道に“異例”進出! 全国127の観光列車を「分布図」にすると……:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)
JR北海道が東急電鉄の豪華観光列車を運行すると報じられた。“異例”の取り組みがどうなるか注目だ。「観光列車大国」の日本には127もの観光列車があるが、まだ空白地帯もある。そこに商機があるかもしれない。観光列車の「分布図」を作ってみると……
北から眺めて、まずJR北海道は空白が大きい。東急電鉄がどこを選ぶか興味深いし、東急電鉄が選ばなかった路線にもチャンスはある。三陸海岸は三陸鉄道がイベント列車を運行しているけれども、通年で運行する観光列車はない。しかし、3月に山田線の沿岸区間が復旧し、三陸鉄道リアス線に統合されると、日本一長い第三セクター鉄道になる。観光列車の登場は期待できる。
福島県沿岸と茨城県も空白地帯だ。東日本大震災の影響が残る。なんとか観光列車を楽しめる場所に回復してほしい。茨城県は鹿島臨海鉄道がアニメのラッピング列車を運行しているけれども、特定のアニメファン向けという色彩が強いため観光列車に数えなかった。JR境線の鬼太郎列車も含めていない。
中部地方も空白だ。JR中央本線の木曽方面は魅力的。飯田線はJR東海が秘境駅号というイベント列車を走らせている。そうした素養があるので観光列車も期待したい。福井県の空白も気になる。えちぜん鉄道は終点に恐竜博物館があり、イベント列車として「きょうりゅう列車」を走らせている。JR西日本の越美北線も車窓が良いので素養はある。終点の九頭竜湖から南、長良川鉄道の北濃駅までを結び、長良川鉄道の観光列車「ながら」と結ぶ回遊ルートができたら面白いと思う。
山陰本線の西側は「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」が通る。九州東部は「ななつ星 in 九州」が走る。東北も「TRAIN SUITE 四季島」のルートがある。どれも距離が長いので地図には示さなかった。しかし、もっと手軽に乗れる列車がもう一つあってもいい。
数年前から「観光列車デビューの話題が続くなあ」と思っていた。あらためて調べてみると、これだけの観光列車が走っていた。もはや鉄道はエンターテインメントだ。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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