2015年7月27日以前の記事
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同一労働・同一賃金の衝撃 大企業は本当に「非正規社員を救う」のか人事ジャーナリスト・溝上憲文の「経営者に告ぐ」(4/4 ページ)

ベテラン人事ジャーナリストの溝上憲文が、人事に関する「経営者が対応すべき施策」を提言する。今回は施行までいよいよ半年を切った「パートタイム・有期雇用労働法」について。同法は、同一労働同一賃金の規定を盛り込んでいるが、正社員と非正社員の待遇差を解消しようとすれば、これまで低い賃金で使ってきた非正社員の賃金を上げざるを得ない。ということは、経営者は空前の「コスト増」に苦しむことになるが……。

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トヨタ、ブリヂストン、NTTの施策

 ブリヂストンは国内工場の約1300人の契約社員に正社員と同水準の夜勤手当(一律2万円)の支給を18年4月から始めている。トヨタ自動車も18年4月から、2年以上働いている非正規の期間従業員に対し、子ども1人当たり月2万円の家族手当を支給している。

 NTTも正社員に支給していた社員食堂などで使える月額3500円相当の電子マネーや食券の「食事補助」を廃止し、18年から仕事や生活面から支援する「サポート手当」(3500円)として有期雇用のフルタイム勤務者まで拡大して支給することにした。

 法律の施行が来年の4月に迫る中で、労働組合がある企業を含めた労使協議も大詰めを迎えている。労使協議には直接の当事者である非正社員も当然加わる必要があり、その上で新たな賃金制度などの制度設計を行う必要がある。前出の弁護士は「労使でまず手をつけるべきは手当でしょう。非正社員から見ても顕在化しやすい職務関連手当、賞与、生活関連給付について優先順位をつけて確認することが大事です。手当が支給されていなければ、合理的理由が言えるかどうかを検証し、言えないとすれば施行までに制度の改定などの検討しておく必要があります」と指摘する。

 一方、諸手当を巡る労使交渉において正社員の手当をなくして待遇を下げることで格差を是正しようとする企業が増えることが懸念されている。ガイドラインではそれを踏まえ、事業主が正社員と非正規社員の不合理な待遇差の相違の解消を行う際は「基本的に労使で合意することなく通常の労働者の待遇を引き下げることは、望ましい対応とはいえない」と釘(くぎ)を刺している。

 企業は労使協議による合意や制度の変更などの作業に加えて就業規則の変更も来年4月までに完了しなくてはならない。不備な点があれば、今後訴訟リスクが高まることになる。残された時間は少ない。

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