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トイレットペーパーを「買い占める」ほうが“合理的”であるシンプルな理由古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)

全国各地の小売店で紙製品が入手困難な状況が続いている。デマと判明しても続く買い占め行動。これを「大衆の愚かな行動」と断じるメディアが多いが、果たして本当にそうだろうか。倫理的には褒められたものではないが、経済学の観点からいえば買い占めに走る行動がむしろ当然で、「買い占めないほうが非合理的である」といっても過言ではない。

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経済的合理性があるからこそ、対策が必要

 ここまで買い占め行動の経済的合理性について論じてきたが、これはあくまで合理性があるというだけで、倫理的な良し悪しとはまた別の問題である。合理性だけを考えると、例えば農作物を自分で作るより、力づくで他人から奪う方が経済的には合理性があるのかもしれないが、法や教育その他のあらゆる対策でこれを行う合理性をなくす対策が取られている。

 では、買い占めを制限する規制があるかというと、現状ではほとんどない。そこで、対策の1つとして、店舗や政府が購入数量に制約を課すということが挙げられる。しかし、購入数量を制限しても転売が止まないのと同様に、抜け穴が多数発見されるので、有効打にはなりにくいだろう。では、もっと単純で効果的な対策は検討できないだろうか。

 ここで重要なのが、全員が買い占めるという方向に動きやすいのは、上記の通り、「相手が本当にデマを信じて買う人がいるかもしれない」という不確実性に起因するという点だ。

 つまり、相手がこのような行動に移らないよう、情報を共有すれば買い占めは起こりづらくなる。具体的には、品薄となっている商品を最低限供給できるということをエビデンスとともにアナウンスすることだ。

 これは、必ずしも全国民に現実的に行き渡らせる量を確保する必要はないだろう。「デマを信じた人が買いに殺到しても、十分に補うことが可能である」という情報が行き渡りさえすれば「買い占める」という行動をとる意味がなく、買い占めないという協調方向に人々が動く可能性が高まるだろう。

 そのような意味で、丸富製紙株式会社がTwitterで公表したトイレットペーパーの在庫写真は、今回の品薄を解消する決定的な有効打となり得るだろう。

筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士

中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。

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