e-Day:3G携帯電話はピンチ? チャンス?

【国内記事】 2001.08.21

 NECと松下グループは8月21日,一部日刊紙のリークで明らかになっていた次世代携帯電話端末開発における提携を正式に発表した。国内市場では勝ち組み同士の協業ということで,都内で行われた記者発表会には大勢のメディアが詰め掛けた。

 iモードでヒット商品を連発する両社だが,それも多分に通信規格や周波数の違いという障壁に守られてのもの。第3世代(3G)の携帯電話は国際標準統一規格に準拠したものになり,どの国に出掛けて行っても,そこの基地局とやりとりできるようになる。いわゆるグローバルスタンダードの確立だ。

 グローバルスタンダードというのは消費者にとっては恩恵があるものの,企業にとっては厳しい現実を突きつけられることになる。企業会計や金融機関の健全性を表すBIS基準を見てもそれは分かるだろう。携帯電話も同じだ。

 欧州には携帯電話メーカーの巨人であるノキアがあり,2001年第1四半期は実に35%を超えるシェアを占めているほか,モトローラ,シーメンス,エリクソン,サムソンがひしめく(ガートナー調べ)。日本勢はといえば,6位に松下,7位にNEC,8位に三菱電機が入るのがやっとだ。風雲は急を告げていたのだ。

 確かに日本は「ケータイ天国」といわれるほど携帯電話が普及している。しかも,欧米では音声中心なのに,渋谷の街角では女子高生が「親指文化」を育んで,電子メールをやりとりしている。

 ひところ,来日する米国ITベンダーのエグゼクティブたちから,必ず聞かされるコメントがあった。

「ナリタに着いたとたんに多くの日本人旅行者が携帯電話のスイッチを入れ,電子メールをチェックしているのには驚かされた」

 フジヤマ,ゲイシャ,カミカゼに並ぶくらいこの業界では「iモード」が世界的に知れ渡った。

 しかし,グローバルスタンダードの現実は厳しい。ましてや3Gの携帯電話端末ともなると膨大なソフトウェアの開発が重荷となってくる。NECの西垣浩司社長は,「コンピュータと同じ。ソフトウェアの比重が極めて高くなってくる」と話す。

 ノキアは2万人弱のエンジニアを擁し,3G端末の開発に取り組んでいるが,NEC・松下連合は8000人から9000人の技術陣でこれに対抗しようというわけだ。西垣氏によれば,このうち5000人以上がソフトウェア開発者という。

 西垣氏は,「アーキテクチャを統一し,基本的なソフトウェアは共同で開発する。それにかかるコストは半分,納期も半分になる」と踏んでいる。

 この4月に3カ年の「創生21計画」をスタートさせ,松下グループの中村邦夫社長も,デジタルAVとモーバイルコミュニケーションを戦略の柱としながらも,「この分野は莫大な投資を必要とするうえ,世代の切り替わりも早い。1社では到底難しい」と率直に話す。

 ただでさえ,クアルコムやエリクソンといった3Gに関する特許を保有する企業に使用料を支払わなければならない。CPUをインテルから買い,WindowsをライセンスするPCメーカーと同じだ。特許を保有する欧米メーカーに比べ,コスト的に15%から30%は割高になるという話も聞く。

 それでも,ピンチはチャンスだ。今回の提携は,早ければ2002年末にも立ち上がる欧州の3G市場に照準を合わせ,いち早く製品を投入するのが狙いだ。得意のAV技術を生かし,松下は2004年春に世界で10%,一方のNECは15%のシェアを取りにいく。

[浅井英二 ,ITmedia]