e-Day:EMCがたゆまぬ抽象化の努力をストレージ分野にも
| 【国内記事】 | 2001.08.22 |
コンピュータの世界には,たゆまぬ仮想化や抽象化の努力があった。IBMはメインフレーム時代に「MVS」と呼ばれる仮想記憶機能を実現したOSを開発し,広大なメモリ空間を使えるようにしたが,この機能はミニコンばかりか,'90年代に入るとWindowsにも搭載された。
Windows NTではHAL(Hardware Abstruction Layer)と呼ばれるハードウェアを抽象化するレイヤを採用し,インテルのx86チップだけでなく,Alpha,MIPS,PowerPCでも動作させるという野心的な取り組みもあった。考えてみれば,OSは複雑なハードウェアを覆い隠して抽象化しているし,OSから見れば,ドライバもさまざまな周辺機器を抽象化するという役割を果たしている。
また,Javaという言語は,かつてのSmalltalkもそうだったが,「Java Virtual Machine」と呼ばれるようにマシンを仮想化してしまうことで「1度書けば,どこでも動く」をうたった。
ネットワークに目を移しても同じ。ネットワークを図示するときに,もくもくとした雲をよく描くが,あれもそうだ。電話網にしてもインターネットにしても,その内部には幾つもの交換機やルータが介在するわけだが,それらは隠されていてユーザーには見えない。電話番号さえダイヤルすれば,あるいはメールアドレスさえ叩けば,相手とつながる。まるで1つの巨大な交換機のお世話になっているようだ。
ストレージの巨人,EMCは8月初め,地元マサチューセッツ州ボストンでアナリストミーティングを行い,この「抽象化」をキーとする新しいビジョン,「オート・インフォメーション・ストレージ」(Auto IS)を掲げている。
会長のマイケル・ラトガーズは,「ストレージ技術は,まだ進化を始めたばかり。次の進化はAuto IS」と話した。
8月22日,台風の直撃を免れた東京都内のホテルでも同社の上級副社長とCTOを務めるジム・ロスニー氏がプレスブリーフィングを行い,抽象化によってもたらされるストレージ管理の自動化は,「ストレージ業界を一変させる大事件」とぶち上げている。
「電話網は理想的なモデルだ。通信業界が頑張っているのであれば,われわれも習いたい」とロスニー氏。
電話番号さえダイヤルすればいいというシンプルな使い勝手は,改めて考えれば凄い。さらに伝送技術や交換機の変更がユーザーに見えることもない。知らず知らずにVoIP技術を使っていたりして,見事に複雑さを隠し,抽象化している。EMCはストレージに関してもこの考え方を取り入れ,管理者をさまざまな作業から解放したいというのだ。
まずはネットワークの雲と同じようにストレージの資源を巨大なプールに集めることで抽象化する。物理的なディスクドライブは,1つの論理的なボリュームとして見え,200Gバイトのデータベースがあった場合,これをどこに格納するかを意識する必要ない。
また,抽象化と並んでデータの「モビリティ」(移行)もEMCのAuto ISを支える重要な技術だ。I/Oトラフィックを監視し,アクセスが集中しているデータがあれば,これを物理的に異なるディスクドライブに移し,負荷を分散するものだ。
実際には同社のフラグシップであるSymmetrixは,この抽象化と移行のコンセプトを1つのきょう体内で具現化しており,これをボックスではなくストレージネットワークに雲を拡大するのがAuto ISとなる。巨大なストレージプールにSymmetrixを1台プラグインすれば,ネットワークがこれを認識し,そのキャパシティや能力を見極め,データを移行してくれるわけだ。
エンタープライズストレージのリーダーであるEMCは,常に情報を管理するためのコストを削減する必要性を訴えてきた。
「われわれがエンタープライズストレージという概念を打ち出した'95年当時,それまでの手法では100Gバイトごとに1人の管理者を置かなければならなかった。ペタバイトのデータセンターなら1万人必要になってしまう。単純な算数だ」(ロスニー氏)
その後,EMCはエンタープライズストレージの概念で1人当たり700Gバイトから800Gバイトまで管理可能な容量を改善し,さらにストレージネットワークの導入で7テラバイトまで可能にした。
ロスニー氏は,1人の技術者が管理できるストレージ容量は,Auto ISによって,桁違いの数百テラバイトまで引き上げられると話す。
単純な算数によれば,ペタバイト級の情報プラントも数人で何とかなる?
[浅井英二 ,ITmedia]
